心房細動(AF)例が冠動脈疾患を合併した場合、脳塞栓症予防のための抗凝固療法だけでなく、冠動脈イベント抑制を目的とした抗血小板療法が必要となる。問題は、これらの併用による出血リスクの増加である。26日からバルセロナ(スペイン)で開催された欧州心臓病学会(ESC)では、「DOAC+抗血小板薬単剤(SAPT)」と「ワルファリン+抗血小板薬併用(DAPT)」の出血リスクを比較したランダム化試験“RE-DUAL PCI”が報告された。報告者はハーバード大学(米国)のChristopher P. Cannon氏である。また同日、NEJM誌ウェブサイトにも掲載された。
RE-DUAL PCIの対象は、冠動脈ステント留置に成功したAF患者2725例である。これらを「ダビガトラン110mg×2/日(低用量)+SAPT」群、「ダビガトラン150mg×2/日(高用量)+SAPT」群、「ワルファリン+DAPT」群の3群に無作為化し、オープンラベルで追跡した。なおDAPTは、ベアメタルステント植え込み例では1カ月後、薬剤溶出ステントなら3カ月後、SAPTに変更とした。
平均14カ月間追跡中、1次評価項目である「大出血・臨床上問題となる非大出血」の発生ハザード比(HR)は、「ワルファリン+DAPT」群に比べ、「低用量ダビガトラン+SAPT」群で0.52(95%CI:0.42-0.63)、「高用量ダビガトラン+SAPT」群で0.72(95%CI:0.58-0.88)と、いずれも有意に低値となっていた。
一方、2次評価項目である「心筋梗塞、脳卒中・塞栓症、死亡、緊急冠血行再建術」のHRは、「低用量ダビガトラン+SAPT」群で1.06(95%CI:0.81-1.38)、「高用量ダビガトラン+SAPT」群で0.88(95%CI:0.64-1.20)と有意差を認めなかった(vs.ワルファリン+DAPT)。ただし、これら2群を「ワルファリン+DAPT」群と個別に比較した、非劣性検定の結果は示されていない。
NEJM誌によれば、当初8520例を登録して3群間の有効性比較を、1次評価項目として行う予定だった。しかし登録が進まないため、現在の患者数に規模縮小し、2次評価項目としてダビガトラン群の併合解析を行うことになったという。高用量・低用量群を併合すると、ダビガトラン群における「心筋梗塞、脳卒中・塞栓症、死亡、緊急冠血行再建術」抑制作用は、「ワルファリン+DAPT」群に対する非劣性が確認された(P=0.003)。有効性を1次評価項目にした、ランダム化試験が待たれる。