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胸腔鏡下食道癌手術における胸管の術前画像シミュレーション【食道癌術後の乳び胸発症予防への期待】

No.4873 (2017年09月16日発行) P.54

小熊潤也 (東海大学消化器外科准教授)

小澤壯治 (東海大学消化器外科教授)

登録日: 2017-09-15

最終更新日: 2017-09-12

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食道癌手術において,胸管を同定しその走行を把握しながら食道切除および縦隔リンパ節郭清を行うことは,胸腔鏡下手術の拡大視効果のもとで胸管に沿った縦隔リンパ節を確実に郭清し,術後乳び胸の発症を予防する上で重要である1)。胸管損傷によって引き起こされる術後乳び胸は,多量に体内の水分や蛋白質などを喪失するため,時に呼吸循環動態に影響を及ぼし,重篤な病態となりうる。さらに,治療法に関しても胸管またはリンパ管の損傷部位の同定が困難で,治療に難渋することも少なくない。胸管は発生当初,左右対称性の管状構造物として発生し,最終的に右下2/3と左上1/3が残り,両者が連結した結果,単一の胸管が形成される。様々な破格型胸管は,この発生の過程で生じるとされている。

当教室では,術前のMRI画像から胸管を三次元的に描出し,術前シミュレーションによりあらかじめ胸管の走行,形態を把握しておくことで,術中の胸管損傷の危険性を減らし,安全・確実な胸管の処理が行えるのではないか,と考えた。これまでの検討では,食道癌手術症例の約20%に画像上何らかの胸管走行異常を認め,特に上縦隔での異常分岐が最も多いことがわかった。術前に胸管MRIを施行し,胸管走行異常の有無を確認して,特に走行異常を有する症例に対しては,胸管近傍の郭清操作の際に拡大視効果を生かして十分に注意を払うことで,術後乳び胸の発症がある程度予防できると考えている。

【文献】

1) Udagawa H, et al:Esophagus. 2014;11(3):204-10.

【解説】

小熊潤也*1,小澤壯治*2  *1東海大学消化器外科准教授 *2同教授

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