未破裂脳動脈瘤は30歳以上の成人の約3%と,比較的高頻度に発見される
症候性の未破裂脳動脈瘤の多くは動眼神経麻痺を呈する
未破裂脳動脈瘤の年間破裂率はおよそ1%である
経過観察中に増大した場合,新たに動脈瘤が出現した場合は手術を検討すべきである
治療適応は破裂予防と不安軽減の両者の側面から検討が必要である。時間をかけ,医師─患者関係を構築すべきである
未破裂脳動脈瘤は様々な状況において発見される。近年の脳ドックやMRIの普及によって,頭部精査の際に偶然に発見されることが多い。未破裂脳動脈瘤は30歳以上の成人の約3%と,比較的高頻度に発見されると言われる1)。様々な報告があるが,Vlakら1)のレビューによると,日本人と欧米人で頻度は大きく変わらないとされ,50歳の保有率は3.2%で,多発性嚢胞腎を有する場合は6.9倍,頭蓋内動脈瘤によるくも膜下出血をきたした家族歴がある場合は3.4倍であった。また,女性のほうが1.6倍多く,50歳以上では2.2倍であった。このように,比較的日常診療において遭遇する機会の多い疾患であると言える。
脳動脈瘤の発見の経緯は様々であるが,頭痛,耳鳴り,めまい,その他の動脈硬化性疾患の精査に付随して発見されることが多い。未破裂脳動脈瘤に起因する症候は一般的には多くないが,見逃さないよう注意が必要である。当然であるが,手術の適応は症候性か,無症候性かによって大きく変わってくる。未破裂脳動脈瘤に起因する症候の多くは眼症状である。大きな動脈瘤は周囲に影響を及ぼし,動眼神経麻痺などを呈することがある。そのため,眼瞼下垂,眼球運動障害が突然生じた症例に遭遇した場合には,未破裂脳動脈瘤の存在も念頭に置いて診察を行うことが勧められる。
このように症候を呈している未破裂脳動脈瘤は破裂の危険度が高いと判断される。Wermerら2)の報告によれば,症候性未破裂脳動脈瘤の破裂危険度は無症候性の4.4倍であるとされており,診断後は可及的早期に治療を検討するほうがよい。
比較的日常的に遭遇することが多い疾患であるが,いざ発見した場合,どのように対処すべきかが,あまり明確ではなかった。つまり,「未破裂」ということは,いつかは「破裂」する可能性があるということであるが,それを明確に説明しづらいといった事実がある。動脈瘤の破裂を未然に発見する意義は,将来的な破裂を予防することにある。脳ドックなどで無症候性病変として脳動脈瘤が発見された場合,患者の純粋な問いかけは「どうしたらいいですか?」である。担当医は,この問いに対し明瞭に回答する必要がある。
残り4,701文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する