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食道癌手術におけるICG蛍光法による再建胃管血流評価【食道癌術後縫合不全ゼロをめざした試み】

No.4876 (2017年10月07日発行) P.54

小熊潤也 (東海大学消化器外科准教授)

小澤壯治 (東海大学消化器外科教授)

登録日: 2017-10-07

最終更新日: 2017-10-03

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食道癌手術において,頸部食道胃管吻合部の縫合不全は他の消化管手術に比べて頻度が高く,いったん発症すると患者のQOLが著しく損なわれるとともに,入院期間の延長にもつながる。縫合不全の原因として,患者の栄養状態,吻合法,再建経路など,いくつか考えられるが,再建胃管の血流が特に強く影響していると考えられている。

これまでは,術者が胃管の色調や周辺血管の拍動の視認,触知などにより主観的に血流の状態を判断していた。一般に再建胃管は,右胃大網動脈を支配血管とした壁内血流により栄養されているが,近年,この支配血管の血流と胃管壁内血流を視覚化する方法として,ICG蛍光法の有用性が報告されるようになった1)。筆者らの検討では,本法における胃管壁内血流速度の遅延が縫合不全発症のリスク因子になることが示唆された2)

胃管血流評価を目的としたICG蛍光法は,現在保険適用外の検査法であることや,壁内血流が遅延する症例に対して縫合不全のリスクを軽減するためにはどのようにすればよいかなど,今後の検討課題は残されているが,術者が術中に胃管血流を客観的に評価し,安全域を確認した上で吻合操作を行えるという点で有用性が高い検査法である。こうした試みの積み重ねにより,食道癌術後の縫合不全が減少すれば,難治性かつ侵襲性の高い食道癌手術に一筋の光明が見出せるのではないかと考える。

【文献】

1) Shimada Y, et al:Esophagus. 2011;8(4):259-66.

2) Koyanagi K, et al:Medicine. 2016;95(30):e4386.

【解説】

小熊潤也*1,小澤壯治*2  *1東海大学消化器外科准教授 *2同教授

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