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大動脈弁閉鎖不全症(AR)に対し経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)は適応となるか?【適応可能だが,人工弁脱落リスク,AR制御の不確実性により通常は適応から除外】

No.4880 (2017年11月04日発行) P.61

小宮達彦 (倉敷中央病院心臓血管外科主任部長)

登録日: 2017-11-04

最終更新日: 2017-10-31

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  • 高齢者の大動脈弁狭窄症(aortic stenosis:AS)に対して経カテーテル大動脈弁留置術(transcatheter aortic valve implantation:TAVI)の施行が増加してきていますが,大動脈弁閉鎖不全症(aortic valve regurgitation:AR)に対しての適応はないのでしょうか。

    (千葉県 K)


    【回答】

    TAVIは,大腿動脈あるいは心尖部よりカテーテルを用いて,自己大動脈弁を残したまま,ステント付き人工弁を圧着固定させる画期的な治療法です。外科手術リスクの高いASに対しては,既に有効性が確立されています。わが国でも2013年に薬事承認が下り本格的に開始となりました。

    治療で用いるデバイスは,石灰化を有する硬化した弁に対して,金属部分の拡張力により固定されるように設計されています。SAPIEN(Edwards Life Sciences社)に代表される「バルーン拡張型デバイス」では,小さく折り畳まれたステンレススチールをバルーンで拡張させて弁輪に固定します。CoreValveやEvolutTMR(Medtronic社)などの「自己拡張型デバイス」は,形状記憶合金であるニチノールが用いられており,左室流出路から大動脈に至る広範囲にステント自体の拡張能により固定されます。

    デバイスのサイズが弁輪径より小さすぎれば,圧着力が小さくなり人工弁が大動脈側や左室側に脱落するリスクがあります。サイズが大きすぎたり弁輪部に石灰化があったりすると,弁輪破裂のリスクがあります。特に「バルーン拡張型デバイス」は,弁輪だけでなく石灰化した弁尖部分も固定に関与していますので,ARでは弁尖の石灰化が少なく脱落リスクが高くなります。「自己拡張型デバイス」においては,脱落リスクは少なくなることが期待できますが,適切な位置に正確に固定できないと弁逆流が十分に制御できない恐れがあります。

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