日本慢性期医療協会の武久洋三会長は9日の会見で、高齢者の誤嚥性肺炎に対する治療について、自院に入院する患者データを分析した結果、「医師によって治療成績は異なる」と指摘した。
日慢協はかねて、日本呼吸器学会の『成人肺炎診療ガイドライン2017』で高齢者肺炎の積極的治療を控える選択肢が明示されたことに対し、「感染症は治療可能な疾患」と主張していた。そこで武久氏は自院の「肺炎」「浸潤影」を認めた患者489人のうち延べ203人(平均年齢83.7歳)のデータを分析。肺炎発症から30日以内に治癒(抗菌薬投与終了)した患者が185人(91.1%)、一方、発症から30日以内に肺炎が原因で死亡した患者は18人(8.9%)だった。
また肺炎患者の血中尿素窒素(BUN)、アルブミン(ALB)、血糖(GLU)、ヘモグロビン(Hb)のデータについて、治癒(88人)と死亡(2人)で比較すると、発症前の各検査値に大きな差は見られないにもかかわらず、死亡患者の死亡直前では大きく悪化していることが分かった。この結果について武久氏は「これは主治医による治療内容が適切でなかったことが原因と考えられる。低栄養や脱水に対する適切な治療が行われていれば、回復できた可能性がある」と指摘。「高齢者の肺炎は一般成人の治療と同じようにやっても治らないことをすべての医師が理解すべき」と主張した。