年末の取りまとめに向け、医師偏在対策について議論している厚生労働省の「医師需給分科会」は11月22日、医師が少ない区域で一定期間勤務した経験を医療機関の管理者要件に組み込む方向性を巡り、議論した。
厚労省は前回会合(8日)で、「医師少数区域」(用語解説)で一定期間勤務した医師を認定・評価する制度を創設し、「認定医師」であることを一定の医療機関の管理者要件に位置づける方向性を示した。制度創設に向け厚労省は、来年の通常国会に医療法などの改正案を提出するとしている。
今回の会合で厚労省は、認定医師を管理者として評価する医療機関として、地域医療支援病院や臨床研修病院などを例に挙げた。勤務経験を評価する対象は、「あらゆる世代の全ての医師」とする一方で、医師としてのキャリアに中立的に対応する観点から「施行日以降に臨床研修を開始する者」に限定する。
これから研修を始める医師が管理者になるのは数十年先になる。このため会合では、同制度が速効性ある偏在対策にはなりえないとする指摘が相次いだ。これに対し厚労省は「地域の代表的な医療機関の管理者になれることが医師個人に対するインセンティブになる」と強調。認定医師を雇用する医療機関向けのインセンティブとして、予算・税制上の優遇措置も検討するとした。
なお、診療所については、管理者要件を定めた場合に制度施行前の「駆け込み開業」が増える恐れが指摘され、管理者要件の導入は見送られる見通しとなった。ただ、「数十年先に管理者になる医師が評価対象ならば、診療所にも同様の要件を設けてもよいのではないか」との声が複数の構成員から上がっている。