【質問者】
田中敏章 たなか成長クリニック院長
2016年,「小児期発症バセドウ病診療のガイドライン」を8年ぶりに改訂しました1)。主な変更点は,①プロピルチオウラシル(propylthiouracil:PTU)は慎重に投与すること,②メチマゾール(methimazole:MMI)はより少量で使用すること,③長期のMMI治療を推奨したことです。
わが国で使用可能な抗甲状腺薬は,PTUとMMIです。PTUでの治療はMMIによる治療に比べて,低用量では治療効果が弱く,高用量では副作用発現率が高くなると報告されています。また,PTUは重症肝障害やmyeloperoxidase anti-neutrophil cytoplasmic antibody(MPO-ANCA)関連血管炎症候群などの重篤な副作用の発現率が高いため,米国では小児にはPTUの使用を控えることになりました。PTU服用中のMPO-ANCA陽性率は64%で,うち20%が発症しています。MMIの重篤な副作用は無顆粒球症であり,頻度は0.35%で,投与量20mg/日以上でリスクが高まります。妊娠第1三半期にMMIを投与された妊婦の新生児では,MMI embryopathy(頭皮欠損,臍帯ヘルニア,臍腸管遺残,気管食道瘻,食道閉鎖症,後鼻孔閉鎖症など)を発症するリスクが高まります。
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