【質問者】
森村尚登 東京大学大学院医学系研究科救急科学教授
「病院船」とは,ジュネーヴ条約に基づき,外観上の規定や武力行為に加わらないことなどの要件のもとに,戦時下でも攻撃を受けないことを保証された船舶です。米国,中国,ロシア,スペイン等は複数の病院船を所有し,軍事利用以外にも幅広い運用実績があります。残念ながら,わが国には災害対応を目的とした病院船の運用実績はありませんが,阪神淡路大震災や東日本大震災の経験から病院船への期待が高まっています。
その意義と役割を考える上で,次の3点は重要な視点と思われます。
災害対応においては,様々な機関・部門が有機的に活動する必要があります。医療も,啓開・救助・処置と系統的に運用されなければなりませんが,一般的に医療者の輸送能力・機動能力は低く,不到達,遭難,さらには二次被害のリスクさえ有しています。海上からのアプローチによる迅速な輸送能力と安定した病院機能を具備した病院船は,被災地に人とモノと活動の場を持ち込む有力な“方舟”となります。
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