わが国でも腫瘍循環器学会が設立され、抗癌剤治療による心毒性の抑制に関心が集まりつつある。本学会では、抗癌剤治療下の乳癌患者に対するβ遮断薬の心保護作用をプラセボと比較した初めての大規模ランダム化試験“CECCY”が報告されたが、有用性の確認には至らなかった。サンパウロ医科大学のMônica Samuel Avila氏が報告した。
CECCY試験の対象は、アントラサイクリン系薬剤を含む化学療法の適応と考えられた、心機能正常でHER2陰性の乳癌患者192例である。すでにβ遮断薬やレニン・アンジオテンシン系抑制薬を服用している例は除外されている。これら192例は、β遮断薬群(カルベジロールを50mg/日目標で増量)とプラセボ群にランダム化され、二重盲検法で24週間追跡された。
その結果、1次評価項目である左室駆出率(LVEF)は、β遮断薬群:0.9%低下、プラセボ群:1.3%低下で、両群間に有意差はなかった。ただし、心筋傷害マーカーであるトロポニンI濃度(2次評価項目)はβ遮断薬群で有意に低く、観察期間を通じて正常範囲内にあった。同様に拡張障害(2次評価項目)の発生率も、β遮断薬群で有意に低かった(24週間時点で30.2% vs. 39.3%、P=0.039)。
1次評価項目に有意差を認めなかった一因としてAvila氏は、プラセボ群におけるLVEF低下例が想定よりも少なかった点を挙げていた。
本試験は報告(現地時間3月11日)と同時にJACC誌に掲載された。