肺MAC症の鑑別疾患には,結核菌など他の抗酸菌感染,および非感染性の気道疾患などが挙げられる
MACは環境に普遍的に存在するため,肺MAC症の確定診断は1回の菌の検出だけでは不十分であり,学会策定の診断基準を用いる
MAC細胞壁成分に対する血清中抗MAC抗体が保険診療で測定できる。陽性適中率が高いため,陽性であればMAC症の可能性が高く,早期診断に有用である
現状では肺MAC症の軽症例は必ずしも治療の対象とはならない。病勢をコントロールすることを目標とし,個々の症例で治療適応を検討する
近年,肺非結核性抗酸菌(nontuberculous mycobacteria:NTM)症の増加が報告されている1)。肺NTM症の中ではMycobacterium avium complex(MAC)症が最も多く,大部分を占める。ついでMycobacterium kansasii(M. kansasii)とM. abscessusが続き,これら以外のNTMによる肺感染症は稀である。肺MAC症患者の発見のきっかけとしては,自覚症状,検診での胸部異常陰影,他の肺疾患の経過観察中などがある。自覚症状は,咳嗽,喀痰,血痰,微熱など非特異的であり,画像検査と併せて初めて肺MAC症を疑うことになる。
肺MAC症は画像所見によって,中葉舌区に多発する小粒状陰影や気管支拡張所見を呈する結節・気管支拡張(nodular bronchiectatic:NB)型(図1)と,上葉を中心に空洞を呈する線維空洞(fibrocavitary:FC)型(図2)の2病型に大別される2)。前者は,肺MAC症に比較的特徴的な所見ではあるが,M. abscessusやM. kansasiiなど他のNTMや緑膿菌などの細菌による慢性気道感染症全般,副鼻腔気管支症候群,関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)の気道病変などの非感染性の疾患も同様の所見を呈するため,鑑別が必要となる。FC型は,結核類似型とも呼ばれるように,画像所見からは肺結核との鑑別は困難である。
その他,稀な病型として孤立結節陰影型,過敏性肺臓炎型がある。孤立結節陰影型は,肺癌との鑑別が問題となり,未診断腫瘍として外科的切除して初めて診断されることも多い。過敏性肺臓炎型は,MACを含むエアロゾルを多量に吸入することで起こる急性過敏性肺臓炎であり,室内のhot tub使用者に発症したことからhot tub lungとも呼ばれる。1997年に米国で初めて報告され,その後,欧米からの報告が相次いだが,わが国では稀である3)。過敏性肺臓炎型の肺MAC症の鑑別疾患には,夏型過敏性肺臓炎や他の有機粉塵吸入による急性過敏性肺臓炎が挙げられる。
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