(宮崎県 S)
医師には,①診察に基づく「死亡診断書」または,②検案に基づく「死体検案書」の交付が義務づけられています(医師法第19条,第20条)。
死亡診断書と死体検案書の区別について,厚生労働省の「平成29年度版死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル」は,医師が「自らの診療管理下にある患者が,生前に診療していた傷病に関連して死亡したと認める場合」には,「死亡診断書」を交付し,それ以外の場合には,「死体検案書」を交付するとしています。
診療中の患者が死亡した場合,これまで当該患者の診療を行ってきた医師は,死亡に立ち会っておらず,生前の診察後24時間を経過した場合であっても,死亡後に改めて診察を行い,「生前に診療していた傷病に関連する死亡である」と判定できる場合には,「死亡診断書」を交付することができます(医師法第20条本文,平成24年8月31日付け医政医発0831第1号通知)。
他方,診療中の患者が死亡した後,改めて診察し,生前に診療していた傷病に関連する死亡であると判定できない場合には,「死体検案書」を交付することになります。
交付すべき書類が「死亡診断書」であるか「死体検案書」であるかを問わず,死体に「異状」を認めた場合には,医師は,24時間以内に所轄警察署に届出をする義務があります(医師法第21条)。
ご質問の患者は,10日前の診察時に問いかけに反応しない全介助,要介護5の状態で余命1カ月と診断されていたとのことですので,かかりつけ主治医は,当該患者の生前の疾病について診療していたと思われます。
そうすると,ご質問では生前の最終診察から24時間以上(10日)経過していますが,これまで当該患者の診療を行ってきたかかりつけ主治医が,当該患者を死亡後に改めて診察して,「生前に診療していた傷病に関連する死亡である」と判定できる場合であれば,「死亡診断書」を交付することができます。
ご質問にある死亡診断書を交付できるか否かは,診療を行ってきた医師が,死亡後診察において「生前に診療していた傷病に関連する死亡である」と判定できるかどうかがポイントであって,当該患者が亡くなったときに当直の看護師がその場にいたかどうかは特に関係ありません。
また,死亡後の診察において,死体に「異状」を認めなければ,所轄警察署への届出は必要ありません。
【回答者】
松井菜採 すずかけ法律事務所 弁護士