【コピーを渡し,オリジナルは自院で保存する】
ご質問には,検体検査,放射線,病理等のどの検査報告書か,また,電子的に参照するものかどうかが明示されておりませんが,いずれの報告書も医療法施行規則第20条の十に定める「検査所見記録」に該当すると考えられ,「診療録等」との理解でよいと思います。電子カルテ環境でも同様です。紙カルテ環境の場合では,検査報告書は診療録とまとめて綴られていますので,保存期間は同規則第20条では過去2年間のものとされているものの,実質的には診療録と同様に療養担当規則により診療録に準じ5年間と考えるのが妥当です。
原本保管の立場から,紙の報告書であればオリジナルをコピーして渡し,オリジナルは自院で保存する,電子カルテであれば,レポート印刷機能等で出力されたものを渡すことになります。原本は電子媒体であり,あくまでも医療の質の向上のための患者サービスの一環で渡したとの位置づけでよいかと思います。診断に使用したものすべては「原本」として保存義務が発生します。
検診,自費等の際の扱いについては,状況が不明な点もありますが,検診(「検」と記載されているので)は主に自治体等とがん検診等を行う診療所との契約行為と考えられます。この場合には,民法上の善管注意義務が発生するため,検査結果の原本は診療所側での保存が求められると考えられます。したがって,受診者が希望されるならコピーを渡し,原本は自院で保存する必要があります。
自費診療の場合も準委任契約と考えられ,保険診療と同様に原本は自院に保存する必要があるため,コピーを渡すのが適切です。
なお,本回答は東京弁護士会所属・中川 学弁護士の意見も求めて作成したものです。
【回答者】
中川 肇 富山大学附属病院医療情報部教授