(東京都 M)
【調剤薬局が承認すれば法律上の問題はないが,専門家と同等の説明はできないことを依頼者自身が承諾する必要がある】
まず,高齢者用マンションの居住者に対して発行された処方箋を,マンションの一般職員が代わりに薬局に提出して処方薬を受け取ることが可能かという点についてです。
確かに,代理での受領に制限を設けていないところはありますが,薬剤師法第25条の2では,「薬剤師は,調剤した薬剤の適正な使用のため,販売又は授与の目的で調剤したときは,患者又は現にその看護に当たつている者に対し,必要な情報を提供し,及び必要な薬学的知見に基づく指導を行わなければならない」とされています。薬剤師は,患者本人か,「現にその看護に当たっている者」に対して情報提供義務があるため,薬剤師の立場からすれば,これらに当たらない人に対しては説明義務を果たすことができず,処方を断ることが可能であると考えられます。ただ,あくまでも薬剤師側の義務であるため,調剤薬局が大丈夫と言うのであれば可能です(その調剤薬局が義務を果たせないことをどう考えているかはわかりませんが)。
続いて,本人に薬を手渡す際に職員が薬に関する質問を受ける点についてです。職員は薬剤師と違って薬に関する説明義務がない以上,説明義務違反としての責任は問われません(なお,調剤薬局の薬剤師は問われる可能性はあります)。ただ,処方箋の処理を任された(準委任契約の締結)以上,薬剤師からの薬の説明を患者に伝えるところまで任されたと考えられますので,間違って伝えて問題が生じた場合に民法第644条に基づく責任を問われる可能性があります。それを避けるためには,薬の説明等は専門家と同等のことはできない,と説明が書かれている文書を依頼者自身に読んでもらうことを前提とした準委任契約を結ぶべきかと思います。
【回答者】
長谷部圭司 北浜法律事務所・外国法共同事業大阪 事務所弁護士