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(3)在宅で心がけたい尿路感染症の予防と感染対策[特集:在宅診療特有の尿路感染症診療]

No.4903 (2018年04月14日発行) P.40

佐々木 淳 (医療法人社団悠翔会理事長,診療部長)

高山義浩 (沖縄県立中部病院感染症内科,地域ケア科医長)

小松裕和 (JA長野厚生連佐久総合病院地域医療部副部長,地域ケア科医長)

登録日: 2018-04-13

最終更新日: 2018-04-11

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在宅における尿路感染症の予防は,本人や家族の生活の一部として行われるものであり,感染症予防が日常生活の過度の負担とならないよう留意すべきである

尿路感染のリスク要因は,排泄ケアのみならずADL,栄養状態,水分摂取量など多岐にわたる。直接的な感染予防策にとどまらず,包括的な支援が求められる

尿中に耐性菌が分離されているケースも少なくないが,保菌しているだけの状態であれば一般的な標準予防策の実施で十分である。耐性菌のスクリーニング検査,予防的抗菌薬投与は不要である

1. 在宅ケアにおける特性をふまえる

在宅ケアでは,本人の疾病観,支援者の能力など,様々な事情を総合的に判断して,とるべき感染対策の落としどころを探す必要がある。特に,感染対策に用いる資材が,利用者負担となることについても配慮しなければならない。

同居する家族に対して,医療者と同様の感染対策を求めることはできない。感染症や病原体に応じた対策を提案しながら,できる範囲でやって頂くしかないことが多い。そもそも,暮らすのが,介護するのが,精いっぱいの家庭も少なくない。家族などの支援者に,感染対策の細かな指示をしたところで,守れるケースはそう多くないものと理解しておきたい。

感染対策の方針について支援者にアドバイスするときには,現在の対策に,足し算,引き算で説明するのがよい。在宅ケアの現場には,CDCガイドラインのような「理想」はない。裕福な家庭もあれば,ゴミ屋敷もある。大家族もあれば,独居もある。そうした中で,理想から語り出しても意味がないからだ。

特に注意したいのは,患者や家族,ヘルパーに対してダメ出しをしないことである。やろうと思っていても,できない事情があることも少なくない。多様な暮らしを支えている在宅ケアへの敬意を忘れないようにしたい。

既に生活の中で確立した対策があり,問題が発生していないのなら,あえて専門的な介入にこだわるべきではないだろう。その対策を自信を持って続けて頂くよう,自宅や施設での暮らしを肯定しながら励ますことが必要なときもある。

ただし,訪問スタッフが標準予防策を遵守することは最低限必要なことである。身体ケアに関わる病原体の伝播は,手指を介する経路が最も重要である。擦式アルコール製剤による手指衛生を基本とし,血液や体液など目に見える汚れがみられるときには,流水と液体石鹸による手指衛生を行う1)。このほか,防護用具を適切に使用することで,他の利用者へと伝播させないよう注意しなければならない2)

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