No.4910 (2018年06月02日発行) P.51
辻 哲也 (慶應義塾大学リハビリテーション医学・腫瘍センターリハビリテーション部門准教授)
登録日: 2018-06-04
最終更新日: 2018-05-29
早期発見や治療法の進歩により生存率は向上し,がんサバイバーは60万人/年増えると予測されている。がんが「不治の病」であった時代から,「がんと共存」する時代になった。
がんリハビリテーションは,予防や機能回復から余命の限られたがん患者の身体機能の維持・緩和ケア主体の時期まで役割を担う。黎明期には主に腫瘍の存在する解剖学的部位の障害が扱われていたが,近年では,がんサバイバーのQOL向上や社会復帰支援を目的に,化学・放射線療法中・後の運動療法,悪液質や骨転移の包括的なマネジメント,緩和ケア主体の時期の症状緩和までニーズは拡大しつつある。がん対策基本法では「がん患者の療養生活の質の維持向上」が国の方針となった。人材育成では,厚生労働省委託事業として,がんのリハビリテーション研修ワークショップCAREERが始まり,「がん患者リハビリテーション料」の診療報酬算定が可能となった。学術面では,『がんのリハビリテーションガイドライン』が公開された。現在,第2版の策定作業中である。
2016年12月に成立した改正がん対策基本法第17条には「がん患者の療養生活の質の維持向上に関して,がん患者の状況に応じた良質なリハビリテーションの提供が確保されるようにすること」が新たに盛り込まれた。第3期がん対策推進基本計画においても,がんリハビリテーションは重要な施策となるであろう。
【参考】
▶ 日本リハビリテーション医学会がんのリハビリテーションガイドライン策定委員会, 編:がんのリハビリテーションガイドライン. 金原出版, 2013.
【解説】
辻 哲也 慶應義塾大学リハビリテーション医学・腫瘍センターリハビリテーション部門准教授