編著: | 岩波慶一(東京ベイ・浦安市川医療センター膠原病内科医長) |
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判型: | A5判 |
頁数: | 356頁 |
装丁: | カラー |
発行日: | 2023年01月10日 |
ISBN: | 978-4-7849-5723-1 |
版数: | 新装改訂第1版 |
付録: | 電子版付き |
好評巻『jmedmook63 ステロイド治療戦略』が書籍化!
1章 ステロイド治療の基礎知識
1 免疫学・薬理学から考える免疫疾患の治療戦略
2 ステロイドの副作用と対策
コラム ステロイドの定説を暴く
2章 疾患別のステロイドの使い方
A 膠原病
1 関節リウマチ
2 全身性エリテマトーデス(SLE)
3 炎症性筋疾患
4 強皮症
5 リウマチ性多発筋痛症
6 成人発症Still病
7 巨細胞性動脈炎/高安動脈炎
8 顕微鏡的多発血管炎/多発血管炎性肉芽腫症
9 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
10 IgA血管炎
11 ベーチェット病
12 IgG4関連疾患
B 消化器
13 炎症性腸疾患
14 自己免疫性肝炎
C 呼吸器
15 特発性間質性肺炎
D 腎臓
16 ネフローゼ症候群
17 IgA腎症
18 急性間質性腎炎
E 神経
19 視神経脊髄炎
F 血液
20 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
21 自己免疫性溶血性貧血(AIHA)
G 集中治療
22 ショック
H 耳鼻咽喉科
23 好酸球性副鼻腔炎
I 皮膚科
24 アトピー性皮膚炎
J 眼科
25 アレルギー性結膜炎
3章 クリニカルクエスチョン
1 ステロイド誘発性副腎不全はどのような人に出現するの?
2 ステロイドカバーの方法は?
3 妊婦・授乳婦への投与法は?
4 ステロイド・免疫抑制薬に薬剤相互作用はあるの?
5 ワクチン接種はできるの?
ステロイド治療の課題。それは,如何にステロイドによる臓器障害を回避しながら疾患のコントロールを行うか,これに尽きる。この課題に向き合うべく,本書では「エビデンス」の有無を意識しながら「医療者の臨床的経験」から各専門家にステロイドの使用法について解説をして頂いた。
本書は一見すると,各領域におけるステロイドの使い方を集めただけの纏まりのない書籍に思われるかもしれない。しかし,その感想を有する限りステロイド治療の真髄は掴めない。編者が読者に望むのは,総論(第1章)とクリニカルクエスチョン(第3章)を基礎に,各論(第2章)を統合してゲシュタルトを形成することである。臓器という境界線を飛び越え,感染症内科や腫瘍内科という病態で括られた診療科のように,免疫疾患の病態や治療法に精通した「免疫内科」という診療科の一員であると自らを想定することで,ステロイド治療の本質が徐々にわかってくる。
本書は「ステロイド単剤が治療の基本」「ステロイドは止められない」という従来型治療に対するアンチテーゼになることを意識してまとめられている。残念ながら疾患によってはアンチテーゼに至っていないものもある。これはエビデンスの不足やオピニオン・リーダーを中心に形成されるコンセンサスに帰する部分が大きいが,脱ステロイドという大きな潮流の途上にあるだけで最終地点ではない。
ステロイド治療では,ほとんどの疾患において質の高いエビデンスは存在しない。しかし,エビデンスは真実に迫るためのアプローチの1つにすぎず,「エビデンスがない=真実ではない」ということではない。EBMとは,「エビデンス」だけではなく「患者の病状と周囲を取り巻く環境」「患者の価値観」「医療者の臨床的経験」を含めて総合的に判断する医療のことである。読者におかれては,各々で本書の内容を咀嚼して,病態生理,薬理作用,疾患背景を統合し,目の前の患者ごとに考察を加え,ステロイド治療を個別化されることを望む。決して従来型の治療法や本書の内容に固執せず,患者ごとにベストの治療方針を探って頂きたい。これこそまさにEBMの実践である。
最後に,隔月刊誌jmedmook 63からの書籍化を提案して下さった日本医事新報社,改訂や執筆を快諾して下さった先生方に深謝申し上げる。
疾患とともに生きる人々の幸福を祈って
2022年12月
東京ベイ・浦安市川医療センター膠原病内科医長 岩波慶一