編: | 能瀬 さやか(東京大学医学部附属病院女性診療科・産科特任助教) |
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判型: | B5判 |
頁数: | 280頁 |
装丁: | 2色刷 |
発行日: | 2020年04月10日 |
ISBN: | 978-4-7849-2382-3 |
版数: | 第1版 |
付録: | 無料の電子版が付属(巻末のシリアルコードを登録すると、本書の全ページを閲覧できます) |
トップアスリートへのサポートだけでなく、競技歴の長いパラ選手、部活動に励む小中学生から社会人まで幅広く、かつ特有の医学的問題への関心が高まっている女性アスリートの診療。
本書では、女性アスリートの心身の特徴や健康管理に関する基礎知識から、月経随伴症状、メンタル、妊娠・産後、更年期障害への対応、アンチ・ドーピングまで、女性アスリートの健康管理・指導を担う上で知っておきたい最新の医学情報をQ&A形式で解説します。
実際に診療を行う場面だけでなく、スポーツの現場で指導に当たるトレーナーや、学校現場で指導を担う教職員・養護教諭が、アスリート本人、保護者に指導を行う場面も想定し、エビデンスに基づく正しい知識を届けるために必要な情報も多数盛り込んでいます。
産婦人科医、精神科医、心療内科医、整形外科医、学校医や健診を担う一般内科医のほか、スポーツ現場で指導的立場にある教職員・養護教諭、トレーナー、栄養士必読の書!
1章 基礎知識
Q01 男女の身体的特徴の違いはどのようなものがありますか?
Q02 成長期の女性アスリートの身体的特徴について教えて下さい。
Q03 初経発来のメカニズムを教えて下さい。
Q04 初経発来と身長・体重・体脂肪には関係がありますか?
Q05 アスリートの初経年齢は何歳くらいですか?
Q06 思春期の体型の変化に応じた指導法はありますか?
Q07 タンポンは何歳から使って大丈夫ですか?
Q08 月経中にプールに入っても大丈夫ですか?
Q09 月経周期と女性ホルモンの関連について教えて下さい。
Q10 女性ホルモンの働きについて教えて下さい。
Q11 月経周期とアスリートのコンディションには関連がありますか?
Q12 女性アスリートに多い疾患・症状にはどのようなものがありますか?
Q13 アスリートの月経は何が問題になりますか?
Q14 指導者はアスリートの月経について把握すべきですか?
Q15 パラアスリートではどのような健康問題が考えられますか?
Q16 パラアスリートへの指導ではどのような点に注意すべきですか?
Q17 競技レベル別に対応の違いはありますか?
Q18 アスリートの月経周期異常はどれくらいの頻度で起こりますか?
Q19 月経随伴症状とは何ですか?
Q20 月経前症候群とは何ですか?
Q21 月経前症候群はどのようなときに疑いますか?
Q22 月経の量が多い目安は何ですか?
Q23 月経中に貧血になることはありますか?
Q24 女性アスリートでは貧血が多いですか?
Q25 貧血は競技パフンスにどのような影響を与えますか?
Q26 アスリートの貧血の診断、治療について教えて下さい。
Q27 多囊胞性卵巣症候群とは何ですか?
Q28 アスリートの心理的発達はどのように進みますか?
Q29 心身の成長段階に応じたメンタルケアの注意点を教えて下さい。
Q30 パラアスリートのメンタルケアの注意点を教えて下さい。
2章 女性アスリートの三主徴
Q31 女性アスリートの三主徴とは何ですか?
Q32 スポーツにおける相対的なエネルギー不足とは何ですか?
Q33 無月経になると何がいけないのですか?
Q34 女性アスリートにはどれくらいのエネルギーが必要ですか?
Q35 利用可能エネルギー不足はなぜ起こりますか?
Q36 利用可能エネルギー不足はどのように判定すればよいですか?
Q37 無月経はどのような競技/種目で多いですか?
Q38 利用可能エネルギー不足による無月経アスリートに対する栄養指導の注意点を教えて下さい。
Q39 利用可能エネルギー不足以外の原因で無月経になることはありますか?
Q40 エネルギー不足を改善すると、体重や体脂肪が増えて競技パフォーマンスに影響しますか?
Q41 無月経に対するホルモン療法はどのように行いますか?
Q42 無月経に低用量ピルは使いますか?
Q43 ホルモン療法を行うと体重は増えますか?
Q44 アスリートの無月経と骨粗鬆症の関連について教えて下さい。
Q45 骨密度はどこの部位で、どれぐらいの頻度で測定するのがよいですか?
Q46 骨密度の評価はどのようにすればよいですか?(診断基準)
Q47 骨密度はYAM値で評価してよいですか?
Q48 競技別に骨密度の違いはありますか?
Q49 若年アスリートの低骨量/骨粗鬆症の治療はどのようにすればよいですか?
Q50 体重が増えると骨密度は増えますか?
Q51 エストロゲン製剤を投与すると骨密度は増えますか?
Q52 女性アスリートの三主徴と疲労骨折との関連について教えて下さい。
Q53 疲労骨折のリスク因子にはどのようなものがありますか?
Q54 競技/種目ごとに疲労骨折の頻度や部位に違いはありますか?
Q55 疲労骨折を起こしているアスリートが無月経のとき、どのような対応がよいですか?
Q56 疲労骨折を繰り返さないためのリハビリやトレーニングのポイントを教えて下さい。
3章 月経随伴症状
Q57 月経周期に応じてトレーニングの内容を考慮する必要はありますか?
Q58 思春期の月経痛に対する対応はどのようにすればよいですか?
Q59 大学生以降の月経痛に対する対応はどのようにすればよいですか?
Q60 月経前症候群への対応は、競技ごとに異なりますか?
Q61 月経周期調節法とは何ですか?
Q62 低用量ピルはどのような薬で、どのような時に使われますか?
Q63 どれくらいのアスリートが低用量ピルを飲んでいますか?
Q64 低用量ピルはドーピング検査で陽性になりますか?
Q65 低用量ピルを服用すると体重は増えますか?
Q66 低用量ピルは10代で飲んでもよいですか?
Q67 低用量ピルは骨へ影響を与えますか?
Q68 アスリートの低用量ピルの服用法を教えて下さい。
Q69 アスリートにお勧めの低用量ピルはありますか?
Q70 低用量ピルの副作用にはどのようなものがあり、どれくらいの割合で起こりますか?
Q71 低用量ピル服用による運動パフォーマンスへの影響はありますか?
Q72 低用量ピルを飲み始めて不正出血が続いているのですが、大丈夫ですか?
Q73 低用量ピルを何年も飲み続けても問題ありませんか?
Q74 低用量ピルを服用していると、将来妊娠へ影響しますか?
Q75 時差のある海外遠征時には、低用量ピルをどのように服用すればよいですか?
4章 メンタルの問題
Q76 女性アスリートでは摂食障害が多いですか?
Q77 女性アスリートの三主徴と摂食障害の関連はありますか?
Q78 どのような競技/種目で摂食障害が多いですか?
Q79 どのような兆候があるとき、摂食障害を疑うべきですか?
Q80 専門家への受診はどのように勧めればよいですか?
Q81 摂食障害を起こしたアスリートはトレーニングを中断したほうがよいですか?
Q82 摂食障害を起こしたアスリートの接し方について教えて下さい。
Q83 アスリートの摂食障害の治療にはどのようなものがありますか?
5章 妊娠・産後に関する問題
Q84 過度なトレーニングをしているアスリートは不妊になりやすいですか?
Q85 無月経になった場合、月経は戻りますか?また、将来妊娠はできますか?
Q86 排卵誘発剤や体外受精で使用する薬剤は使用しても大丈夫ですか?
Q87 妊娠中、トレーニングをやめなければいけませんか?
Q88 妊娠中や産後トレーニングに影響する症状として、どのようなものがありますか?
Q89 産後はどれくらいからトレーニングを始めてもよいですか?
Q90 経腟分娩と帝王切開で復帰時期に差はありますか?
Q91 競技復帰のときに授乳はどのようにすればよいですか?
6章 更年期障害
Q92 更年期アスリートのコンディショニングで注意すべき点は何ですか?
Q93 更年期障害はアスリートのパフォーマンスに影響を与えますか?
Q94 更年期障害を抱えるアスリートにホルモン療法をしても、問題ありませんか?
Q95 更年期障害を抱えるアスリートに漢方薬で対応しても大丈夫ですか?
Q96 更年期障害に対する市販薬を使っても大丈夫ですか?
Q97 閉経後の骨粗鬆症治療薬処方の際に注意することはありますか?
7章 アンチ・ドーピング
Q98 婦人科で処方されるホルモン製剤は使っても大丈夫ですか?
Q99 月経随伴症状などの治療に漢方薬は使ってもよいですか?
Q100 ドーピング禁止物質とはどのような物質ですか? 調べる方法はありますか?
Q101 市販薬や健康食品に含まれている成分でも問題となるものがありますか?
Q102 サプリメントはとっても大丈夫ですか?
Q103 鉄剤の注射を行っても大丈夫ですか?
付録1 受診すべき症状のチェックリスト
付録2 女性アスリートの健康問題に関する情報サイト
近年、女性アスリートの活躍や女子種目の拡大等を受けて、女性アスリート特有の医学的問題に対する関心が高まっています。
本来スポーツは、健康維持・促進、疾病予防など、医学的に健康に良い影響をもたらすものです。しかし、10代からの過度なトレーニングにより健康を害し、引退後の健康に影響を及ぼしているケースがみられます。また、対策がありながらも、情報を持っていないために女性特有の問題が放置され、コンディションやパフォーマンスに影響が出ているアスリートもいまだ多いのが現状です。
これらの問題の解決に向けて、スポーツの関連団体や医学会が連携を取り、受診環境の整備や啓発を行っており、東京大学産婦人科学教室でも、2017年4月に女性アスリート外来を開設しました。受診するアスリートは、整形外科医や指導者、アスレティックトレーナー、公認スポーツ栄養士等からの紹介であることが多く、多職種が連携を取り、1人の女性アスリートをサポートする機会が増えている印象にあります。このため、女性アスリートに関わるスタッフが、医学的問題や治療に関する知識を共有し、共通認識のもと対応することが求められています。
女性アスリートの婦人科の問題については、これまで、産婦人科医向けのガイドラインや管理指針等が発行されていますが、多職種の医療従事者を対象に、健康管理や指導を示した書籍は少ない現状にあります。また、国内ではトップアスリートへのサポートは充実していますが、部活動に励む小学生から社会人の女性に対する医学的サポートはまだまだ課題が多く、産婦人科医以外の医師、医療従事者が対応するケースも多くみられます。
本書では、女性アスリートに関わる医療従事者がどのような健康管理や指導を行うべきか、日々の疑問をQ&Aで示し、専門家にわかりやすく解説していただきました。女性アスリートが健康で長くスポーツに参加できるよう、多職種が連携を取り、競技レベルを問わず、また、引退後のヘルスケアも考慮した長期的な視点で医学的サポートを行う際に、本書が貢献することを願っています。
2020年4月
東京大学医学部附属病院女性診療科・産科 特任助教
能瀬さやか
下記の箇所に誤りがございました。謹んでお詫びし訂正いたします。