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消化器疾患に対する心身医学的アプローチ 機能性胸焼けの診断と治療の実際 [学術論文]

No.4768 (2015年09月12日発行) P.43

春日井邦夫 (愛知医科大学内科学講座消化管内科教授/消化器心身医学研究会幹事)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-13

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  • RomeⅢ診断基準では,病理組織学的基盤がはっきりしている食道運動異常を除き,食道酸逆流曝露時間正常,症状に逆流の関与がなく,プロトンポンプ阻害薬(PPI)試験反応不良な場合を機能性胸焼け(FH)と位置づけている。しかし,日本の実臨床においてはPPI抵抗性の非びらん性胃食道逆流症(NERD)をFHとして取り扱う場合が多い。確定診断のためには食道機能検査が必須であるため,実臨床においてFHを正確に診断し,的確な治療を行うことは難しい。今後,食道機能検査の普及とともにRomeⅢ診断基準の改訂も見据えた研究の進展が期待される。

    1. 機能性胸焼け(FH)とは

    胸焼け,呑酸などの典型的な胃食道逆流の症状が存在するにもかかわらず,上部消化管内視鏡検査で食道粘膜傷害を認めない非びらん性胃食道逆流症(non-erosive reflux disease:NERD)1) は,胃食道逆流症(gastro-esophageal reflux disease:GERD)の半数以上を占め,GERD治療の第一選択薬であるプロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor:PPI)投与による症状改善率は低いことが知られている。
    一方,RomeⅢ診断基準2)では,器質的な消化管疾患がないにもかかわらず,慢性的な消化器症状を呈する機能性消化管障害(functional gastrointestinal disorders:FGIDs)の病型分類として,胸焼け症状に関して機能性胸焼け(functional heartburn:FH)が機能性食道障害に明記されている。FHは,①胸骨後方に灼熱感を伴う不快感,または痛みが存在する,②症状の原因となるような胃食道逆流が確認できない,③病理組織学的に確認できる食道運動障害がない,の3項目すべてを満たしていること,6カ月以上前から慢性的に症状があり,最近3カ月は上記の診断基準を満たしていることとされている。
    RomeⅢ診断基準のフローチャートによると,内視鏡陰性胸焼け患者に24時間食道内pHモニタリングを行い,異常な酸逆流の存在,正常範囲の酸逆流であっても症状との関連がある場合,さらに,PPI投与によって症状が改善すれば,内視鏡陰性逆流症(endoscopy-negative reflux disease:ENRD)関連の胸焼けと推定診断し,それ以外をFHとすると示されている(図1)2)

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