機能性ディスペプシア(FD)はcommon diseaseであり,しばしば治療に難渋する。そのため,2014年に日本消化器病学会によりガイドラインが作成された。その中で,向精神薬治療および心理評定の有効性が示されている。一部の抗うつ薬と抗不安薬は有効であるが,用量と副作用に注意が必要であり,また,薬物のみに頼らない心理社会的側面へのアプローチ法の習得は治療効果を上げることが期待できる。FDは個々の患者に合わせた診療が有効であると考えられる。
機能性ディスペプシア(functional dyspepsia:FD)は,機能性消化管障害(functional gastrointestinal disorders:FGIDs)の代表的疾患である。日本人のFD有病率は,健診受診者の11〜17%,上腹部症状を訴え病院を受診した患者の45〜53%に上り,日常臨床で遭遇する機会が大変多いcommon diseaseである1)。
そのため,診療ガイドラインの作成が望まれ,2014年4月に日本消化器病学会より「機能性消化管疾患診療ガイドライン2014─機能性ディスペプシア(FD)」(以下,ガイドライン)が発刊された。その中でFDは「症状の原因となる器質的,全身性,代謝性疾患がないにもかかわらず,慢性的に心窩部痛や胃もたれなどの心窩部を中心とする腹部症状を呈する疾患」と定義されている1)。
FDは生命を脅かす疾患ではないものの,生活の質(quality of life:QOL)に大きな影響を与えるため,丁寧で十分な治療が必要とされる。ガイドラインはエビデンスに基づいた治療を提示しており,FDの日常診療の支援において大きな役割を担うことが期待される。FDの初期治療は,酸分泌抑制薬と消化管運動機能改善薬の薬物治療が推奨されているが,初期治療に反応が乏しい場合は,二次治療および専門治療へと移行する(図1)1)。
FDの二次治療は,抗うつ薬,抗不安薬および漢方薬治療が含まれ,専門治療は心理社会的側面の評価となる。本稿では,FDを診療する上で,難しいと感じられる二次治療について概説する。特に,FD治療における向精神薬のエビデンス,ならびに心理的要因に対するアプローチについて述べる。
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