加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)は,加齢による男性ホルモン低下により,身体・精神・性機能関連の種々の症状を認める
LOH症候群に対する男性ホルモン補充療法は,問診票により症状の重症度を判定し,わが国では遊離型テストステロン(FT)値により適応を検討する
FT値が判明していない,または低下していない場合,さらには男性ホルモン補充療法が禁忌の際には,漢方製剤による治療法も有用である
LOH症候群に対する治療継続期間に関しては,一定の見解は定まっていないが,症状や採血などにより,継続するかどうかは個々に判断する必要がある
男性ホルモン(アンドロゲン)は主に副腎と精巣で合成され,その主たるものはテストステロンであり,95%以上が精巣で産生される。加齢男性性腺機能低下症候群(late- onset hypogonadism:LOH症候群)は,加齢に伴いアンドロゲンが低下することにより,アンドロゲン標的臓器の機能不全が生じる病態である1)。したがって,LOH症候群における症状は多岐にわたる。LOH症候群の症状を示す問診票として国際的に広く用いられているAging Male’s Symptoms(AMS)スコア2)は,身体・精神・性機能関連の症状の質問項目から構成されている。具体的な症状としては,性欲低下,勃起障害,夜間勃起現象の減少,疲労・抑うつなどの気分変調,睡眠障害,筋力低下,内臓脂肪増加,体毛と皮膚の変化,骨粗鬆症などが挙げられている3)。症状が様々で,不定愁訴のようにとらえられ,さらに通常の日常診療では男性ホルモン値測定のための採血を行うことは稀であり,LOH症候群の診断に至るまでには,時間がかかったり,紆余曲折があったり,精神的なものとされてしまうこともしばしば経験される。テレビ,新聞,インターネットなど,マスコミ主体の情報をもとにLOH症候群ではないか,として受診するケースも多い。医療者側としては,中高年男性で種々の症状を訴え,一般的な検査所見で大きな異常がない場合には,LOH症候群を鑑別疾患のひとつに挙げることが重要である。