患者の困っている便秘症状と医師が重視する便秘症状にはギャップがある。低い処方継続率を向上させるために,患者満足度を上げることが求められている
長い使用経験から,わが国で多く処方されている酸化マグネシウム,刺激性下剤にはそれぞれ注意を要する
新たな治療薬である上皮機能変容薬と胆汁酸トランスポーター阻害薬などがわが国で使えるようになるが,海外に比べてエビデンスが乏しく,わが国におけるエビデンスを早急に明らかにすべきである
高齢者便秘に関しては,その生理機能を鑑み,新たな治療ストラテジーを検討すべきである
わが国で初めてとなる「慢性便秘症診療ガイドライン2017」1)が2017年10月に公開された。
本ガイドラインでは,“便秘”とは「本来体外に出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義し,“便秘症”とは,便秘により症状が現れ,検査や治療を必要とする場合であるとしている。その症状として排便回数減少によるもの(腹痛,腹部膨満感など),硬便によるもの(排便困難,過度の怒責など),便排出障害によるもの(軟便でも排便困難,過度の怒責,残便感とそのための頻回便など)がある。この慢性便秘症の治療として,食習慣を含む生活習慣の改善,摘便などの理学的治療,薬物療法などの保存的治療と外科的治療がガイドラインに記載されている。
薬物治療に関しては,30年振りの便秘治療薬として発売されたルビプロストン,現在は便秘型過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome with constipation:IBS-C)治療薬であり,慢性便秘症の適応追加を予定しているリナクロチド,そして世界初となる胆汁酸トランスポーター阻害作用(ileal bile acid transporter inhibition:IBAT-I)を有するエロビキシバットが,2018年4月にわが国で発売される等,続々と新薬ラッシュとなり,その意味でもガイドライン発刊はタイムリーである。
本稿ではこれら新薬を含めた内服治療薬について解説を行う。