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塞栓性梗塞予防のための抗凝固薬投与の必要性は?

No.4922 (2018年08月25日発行) P.58

加藤貴雄 (国際医療福祉大学三田病院特任教授/心臓血管センター)

登録日: 2018-08-23

最終更新日: 2018-08-21

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非弁膜症患者で60歳以上の高齢,過去の心房細動の確たる心電図記録が1回だけある症例の場合,下記についてご教示下さい。国際医療福祉大学三田病院・加藤貴雄先生に。
(1)1回でも過去に心房細動の記録があれば,半永久的に塞栓性梗塞予防のために抗凝固薬を投与しなければいけないのでしょうか。
(2)投与する必要があるとすれば,①ワルファリン,②抗トロンビン製剤,③直接第Ⅹa因子阻害薬のどれが適当でしょうか。
(3)1カ月に1回,2~3カ月に1回,6カ月に1回といったように,心電図記録あるいはホルター心電図記録,スクリーニングを反復して,どのような患者に心房細動の再発が記録されているのか層別化した成績はありますか。

(兵庫県 T)


【回答】

【合併症がなければ,65歳未満の男性は抗凝固治療の適応にはならない】

60歳以上の発作性心房細動における抗凝固薬投与の必要性についてのご質問ですが,日本循環器学会のガイドラインによれば,年齢が75歳未満で,心不全,高血圧,糖尿病および脳梗塞の既往がなければCHADS2スコアは0点です。特に65歳未満の男性であればCHA2DS2-VAScスコアも0点で,抗凝固治療の適応にはなりません。ご質問の例では心電図で確認された心房細動は過去に1回だけとのことですが,抗凝固治療の必要性に関しては,心房細動発作の回数よりも血栓形成と,それによる脳梗塞発症のリスクに重点を置いたガイドラインになっています。

今後合併症の出現などによってCHADS2スコアが上昇した場合は抗凝固治療の適応になる可能性がありますが,高齢者の非弁膜症性心房細動の場合は,副作用としての出血のリスクや服薬コンプライアンス,コントロールの煩雑さなどの観点から,ワルファリンよりも新規抗凝固薬が望ましいとされています。

心房細動の再発頻度に関しては,再発時に必ずしも症状があるわけではなく,無症候性心房細動が相当数あり,これを確実に把握するのはきわめて困難なことで,ホルター心電図などで記録のタイミングを正確に層別化した成績はこれまで示されていません。

Gladstoneら1)は,心房細動を自動記録できるイベントレコーダーを用いて30日間の連続モニタリングを行い,24時間では2.2%,2週で11.6%,4週間連続モニターすると14.8%の患者で心房細動が記録されたと報告しています。また筆者らの成績では2),約2週間のイベントを記録した動悸を主訴とする患者448例,1660回の記録において,心房細動は200回(12%)でした。イベントレコーダーを用いてカテーテルアブレーション後の再発をみたTakagiら3)によると,342例中83例(24.3%)で心房細動が再発していました。このように患者背景,記録法,記録条件などにより得られる成績に大きなばらつきがあることがわかります。

【文献】

1) Gladstone DJ, et al:N Engl J Med. 2014;370 (26):2467-77.

2) Yashima M, et al:第26回日本心電学会学術集会, 2010.

3) Takagi T, et al:Circ J. 2014;78(11):2637-42.

【回答者】

加藤貴雄 国際医療福祉大学三田病院特任教授/心臓血管センター

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