No.4726 (2014年11月22日発行) P.38
石川 肇 (新潟県立リウマチセンター副院長)
登録日: 2016-09-08
最終更新日: 2017-03-16
指屈筋腱腱鞘滑膜炎が腫瘤状に増殖し,指屈伸運動時に靱帯性腱鞘のトンネルの出入り口,あるいはトンネル内で滑膜腫瘤がひっかかり弾発現象を生じることがある。特にA1滑車の入り口,A2滑車の出口でひっかかることが多く,指の屈曲制限も同時にみられる(図1)。
52歳,女性。数カ月前から左中指中手指節間(metacarpophalangeal:MP)関節レベルに屈筋腱の走行に沿って滑膜腫瘤を皮下に触れた。屈曲制限と弾発現象があったが,指を伸展させようとしたときに突然,中指がロックされて動かなくなってしまった(ロッキング,図1a)。治療は,手術で滑膜腫瘤を切除しスムーズに指が動くようになった。
通常,弾発が軽度であれば,1~2回トリアムシノロンアセトニド〔ケナコルト-AⓇ(0.25 mL, 2.5mg程度)〕を27G注射針を用いて近位指線から腱鞘内に注入し改善することが多いが,難治性の場合には指腱鞘滑膜切除が行われる。滑膜切除の際,A2,A4滑車は弓づる形成予防のためにできるだけ温存する。示・中指では,屈筋腱の尺側移動を予防するためにA1滑車もできるだけ残す。
スワンネック変形がある場合,指屈曲時に近位指節間(proximal interphalangeal:PIP)関節を屈曲していくと,背側に転位し緊張している側索が,張り出した基節骨頭膨隆部の顆部を乗り越え,急激に掌側に落ち込み,弾発現象がみられることがある(図2)。
また,指伸筋腱がMP関節レベルで屈曲していくと尺側に偏位し,伸展していくと中央部に整復される際に弾発現象を引き起こすことがある。
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