No.4729 (2014年12月13日発行) P.36
梁 勝則 (林山クリニック希望の家院長)
登録日: 2016-09-08
最終更新日: 2017-03-16
末期がんはごくありふれた病態であるが,多くの開業医は主治医として取り組むのを差し控えたくなるかもしれない。その理由としては主に3つのことが考えられるが,近年の在宅緩和医療システムの充実により,かなり改善されている。
まず,症状緩和に対する不安であるが,最近では紹介元病院の緩和医療の水準が上がっているため,連携しながら緩和治療を行うことが可能な場合が多い。難渋する際には紹介元を受診してもらい,治療変更のアドバイスもしくは具体的な処方を仰ぐことができる。症状緩和の参考書も豊富に出版されており,副作用の少ない麻薬性鎮痛薬も次々と開発されているので,以前に比べて痛みの緩和は容易となっている1)2)。
次に,在宅療養に伴う時間外対応や緊急入院の問題であるが,24時間対応の訪問看護ステーションとの連携により,よほどのことがなければ電話対応ですむことが多い3)。また,2014年度から創設された「地域包括ケア病棟」は在宅患者の緊急受け入れを要件としており,今後,紹介元病院,在宅療養後方支援病院(まだ数は少ない)とともに緊急入院の受け皿が急速に整備されつつある。
3つ目が本連載のテーマでもある,死を間近にした患者やその家族とのコミュニケーションに対する戸惑いである。医師にとっても,死にゆく患者やその家族とコミュニケーションすることはやはり心の重い任務であるが,一定のルールで会話すると望外なまでに患者や家族から感謝され,医師としての満足度も高まる。それは恐らく,治療医から見捨てられたと感じている末期がん患者を心のレベルでサポートするからであろう。
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