散発性の胃底腺ポリープ(FGP)は従来,胃癌を合併することはきわめて稀とされていたが,近年,dysplasiaや胃癌を合併した症例が報告されている
プロトンポンプ阻害薬(PPI)長期内服によりFGPが増大することが指摘されている。PPI長期内服がdysplasiaや胃癌合併に関与している可能性も考慮されているが詳細は明らかでない
dysplasiaや胃癌を合併したFGPに特徴的な内視鏡所見は,径が大きく表面に凹凸不整を伴うポリープである。dysplasiaやがんは表層の一部に限局しているため,生検による病理組織診断では多くの場合診断困難であり,摘除生検目的の内視鏡的切除を行う必要がある
散発性の胃底腺ポリープ(fundic gland polyp:FGP)は主にヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori:H. pylori)陰性の胃にみられる。病理組織学的には胃底腺が増生した過形成の像で,胃底腺の構築異常と部分的な腺管の囊胞状拡張が特徴的である1)。胃底腺が頸部粘液腺より表層部に出現し,胃底腺の存在部である深部には粘液産生細胞がみられ,産生された粘液の排出が妨げられる結果,拡張腺管が形成されるがその成因は不明である。
散発性FGPは,「胃癌取り扱い規約 第15版」によると腫瘍様病変に分類されている1)。FGPではAPC遺伝子変異は低頻度(8%)だが,βカテニンの変異を高率(64~95%)に認めることから,細胞異型を認めないにもかかわらず腫瘍性病変であるという考えも提唱されている2)。
一方で,家族性大腸腺腫症(familial adenomatous polyposis:FAP)に随伴するFGPは多くの遺伝子変異がみられ,dysplasiaや胃癌を合併した症例の報告がある3)~5)。散発性FGPは従来悪性化することはきわめて稀であるとされてきたが2),近年,散発性FGPにもdysplasiaや胃癌を合併した症例の報告が散見されている6)~9)。H. pylori陽性の胃における散発性FGPのがん化は,H. pylori感染がその主因と考えられる。他方で,H. pylori陰性の胃における散発性FGPのがん化は,後述するプロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor:PPI)の長期内服が関与している可能性が考慮されるが,要因について詳細は明らかでない。