医学においては,疾病と原因との因果関係を明らかにするために,疫学などの観察試験が多く用いられてきた。たとえば,循環器疾患の原因と考えられている危険因子には,高血圧,糖尿病,脂質異常,高尿酸血症,喫煙,肥満などがある。しかし,これらは観察試験から得られた因子であり,交絡が存在する可能性が否定できず,たとえ交絡因子を統計学的に補正しても,見えない交絡因子は除外することができない。したがって,原因を確定するには無作為化介入試験が必要であった。
しかし,介入方法がない場合や人道的理由で介入が困難な場合は,無作為化試験を行うことはできない。また,薬剤を用いて介入が可能であったとしても薬剤の持つ多面的作用かもしれず,真の因果関係を明らかにすることは困難であった。
ところが,メンデルランダム化解析(mendelian randomization analysis)という自然界で行われている無作為化を利用した解析法が開発され,観察試験においても交絡因子を除外し,因果関係を明らかにすることができるようになった。
メンデルランダム化解析とは,「対立形質が無作為に遺伝する」という仮定に基づく分子疫学的解析法である。最初の発表は,1991年の骨髄移植の予後における研究であった1)。
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