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過敏性腸症候群:プライマリケアでの対応

No.4938 (2018年12月15日発行) P.52

北條麻理子 (順天堂大学消化器内科先任准教授)

永原章仁 (順天堂大学消化器内科教授)

登録日: 2018-12-12

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【食事指導の研究の進歩と新薬の登場】

過敏性腸症候群(IBS)の診療ガイドライン1)に基づき,プライマリケアでの対応について解説する。

食事指導として,高脂肪食や香辛料の摂食回避が推奨されている。また,低FODMAP(発酵性のオリゴ糖,二糖類,単糖類,ポリオール類)食による症状改善が期待されている。高繊維食は,腹痛に対しては無効であるが,便秘に対して有効であると言われている。不溶性繊維食摂取によって,むしろIBS症状が増強する場合があることを念頭に置く必要がある。プロバイオティクスも治療法として用いることが推奨されている。

薬物療法としては,消化管機能調節薬や高分子重合体とともに下痢症状には5-HT3拮抗薬,便秘症状には粘膜上皮機能変容薬を投与する。さらに止痢薬,下剤,そして腹痛には抗コリン薬を併用する。ルビプロストン,リナクロチド,エロビキシバットと,便秘症状に対して使用可能な薬剤が相次いで登場し,便秘型IBSの治療選択肢が広がった。いずれの薬も粘膜上皮機能を変容させ,腸管内への水分分泌を促す。リナクロチドには大腸の痛覚過敏抑制作用もあり,腹痛改善にも働く。ルビプロストンとエロビキシバットの保険適用病名は慢性便秘症であり,IBS単独病名では保険適用外になるため,処方時には注意が必要である。

食事指導に関する研究や新薬の登場により,病状のコントロールがしやすくなる可能性がある。プライマリケアでの診療がますます重要になってくるであろう。

【文献】

1) 日本消化器病学会, 編:機能性消化管疾患診療ガイドライン2014-過敏性腸症候群(IBS). 南江堂, 2014.

【解説】

北條麻理子*1,永原章仁*2  順天堂大学消化器内科 *1先任准教授 *2教授

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