【臨床的に意義のある前立腺癌を効率的に診断する新技術】
前立腺癌のうち,患者の予後に影響を及ぼすのは,体積0.5cc以上の癌であると考えられ,“significant cancer(臨床的に意義のある癌)”と呼ばれる。近年,3mmスライス厚のmultiparametric MRI(mpMRI)(T2強調画像,ダイナミックMRI,diffusion画像,ADCマップなど)により,significant cancerの診断が可能であることが報告され,前立腺癌の疑いの強さを5段階に分類するProstate imaging-reporting and data system(PI-RADS)が使用されている。
従来の前立腺生検は,経直腸的超音波(TRUS)画像観察下に,6~20箇所の生検が行われてきた。しかし,TRUS画像では検出困難であったsignificant cancerの多くがmpMRIにより検出可能となり,mpMRIは生検に利用されるようになった。MRI-TRUS融合画像ガイド下生検は,生検時のTRUS画像とMRIを融合させ,前立腺内部のsignificant cancerを3次元的に明らかとし,その融合画像ガイド下に生検を実施,生検部位を記録するものである。
筆者らは,BioJetⓇシステム(D&K Technologies GmbH,Germany)を用いて,250人に本生検と系統的生検を同時に行ったところ,significant cancerの検出率に有意差が認められ(55% vs. 25%,P<0.001),mpMRIで癌が強く疑われた部位(PI-RADS 5)からのsignificant cancer検出率が80%と高率であったことを報告した1)。本診断技術は,2016年2月に厚生労働省より先進医療Aとして承認された。
【文献】
1) Shoji S, et al:Int J Urol. 2017;24(4):288-94.
【解説】
小路 直 東海大学医学部付属八王子病院泌尿器科准教授