No.4950 (2019年03月09日発行) P.10
松坂英樹 (松坂内科医院院長)
登録日: 2019-03-08
最終更新日: 2019-03-06
SUMMARY
日常診療で遭遇する生活習慣病や嗜好に問題のある患者には行動変容を促すアプローチが必要になることが多い。行動変容の考え方や方法論として,LEARNのアプローチ,行動変容のステージなどについて解説する。
KEYWORD
行動変容
行動変容とは人の行動が変化すること。言葉にすると簡単なことだが,人が変わるためにはきっかけやプロセスが重要になる。そのために医療者として適切な関わりが必要だ。
PROFILE
2006年に川崎医科大学を卒業。奈義ファミリークリニック/津山中央病院 家庭医療後期研修プログラム(現在は名称変更)を修了後に家庭医療専門医・指導医を取得。2012年から現職場で診療を行っている。
POLICY・座右の銘
行雲流水
日常診療では薬の処方だけでは十分でなく,生活習慣病の診療における食事療法や運動療法,服薬のアドヒアランスの改善,喫煙・アルコール過剰摂取への介入など,患者の行動変容を促すアプローチが必要になることが多い。
しかし,行動変容を促すことは容易ではなく,医療者にとってもストレスがかかり,思わず恐怖心を煽るようなことを言ってしまった経験もあるのではないか(逆効果になる可能性もある)。行動変容の基礎になっている行動科学のアプローチを知ることで,医師患者ともにストレスが少なく行動変容に取り組むことができるので,そのポイントについてまとめていく。
行動変容は,いわゆる医師からの押しつけにならないように,患者の考えや気持ちを理解しながら治療を進めていく必要がある。その際に,BerlinとFowkesが提唱した「LEARNのアプローチ」を用いると理解しやすい。これは異なった文化背景をもつ医師と患者の間で行われる患者教育に非常に適したモデルである。以下の5つのステップで構成されている。
Listen(傾聴)
まずはその状態に対する患者の考え方や希望を知る
Explain(説明)
医学的見地からできるだけわかりやすい言葉で伝える
Acknowledge(相違の明確化)
感情面に共感した上で,同じ土俵に立てたかを確認する
Recommend(提案)
お互いの考えをふまえ,患者にあったプランを提案する
Negotiate(交渉)
粘り強く援助していく,喧嘩にならずいかに支援するかを考える