膠原病には,しばしば1人の患者に2つ以上の特徴的な症状が同時に出現する重複現象を認めることがある。混合性結合組織病(mixed connective tissue disease:MCTD)は1972年にSharpらによって提唱され,臨床的に全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)様,強皮症様,筋炎様の症状が混在し,かつ血清中の抗U1-RNP抗体の高力価陽性を特徴とする疾患である。今日ではMCTDは広義のoverlap症候群の一病型に分類されるが,個々の診断基準は必ずしも満足しないことが多い。
SLE,強皮症,筋炎のうち,2疾患以上の症状が同時に認められ,抗U1-RNP抗体が陽性であれば,MCTDと診断してよい。
Raynaud現象はMCTDの初発症状であることが多く,ほぼ全例近くに認められる。手指と手の腫脹はMCTDに特徴的な所見であり,頻度も高い。SLE様症状として発熱,顔面紅斑,リンパ節腫脹,多発関節炎,漿膜炎(胸膜炎および心外膜炎)を認める。強皮症様症状として手指に限局した皮膚硬化(手指硬化症,強指症),間質性肺炎,食道蠕動低下が比較的高頻度に認められる。筋炎様症状はしばしば初発症状となり,躯幹近位筋の筋力低下,筋痛,筋原性酵素上昇を認める。肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension:PAH)はMCTDの4~10%に合併する最も重要な予後因子であり,適切な治療が行われないときわめて予後が悪い。
検査所見では抗U1-RNP抗体はMCTD診断の必須項目である。抗核抗体は斑紋型高値陽性を示す。胸部X線およびCT検査では30~50%に両側下肺野の間質性陰影を認める。心エコー検査で推定肺動脈収縮期圧が36mmHgを超える場合は,PAHを疑って右心カテーテル検査を行うべきである。
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