政府の生命倫理専門調査会(会長:福井次矢 聖路加国際大学長)は22日、ゲノム編集技術等を用いて遺伝子改変を施したヒト受精胚をヒトや動物の胎内に移植する臨床利用について、法規制を含めた対応の検討を求めたタスク・フォース(作業部会)の報告書案を了承した。厚生労働省と文部科学省で制度の枠組みを審議し、今秋をメドに調査会に経過を報告する。
日本では現在、ゲノム編集技術を用いたヒト受精胚の胎内移植については、研究倫理指針で基礎研究としての実施を禁止しているが、医療提供としての臨床利用は指針の対象外で明確な規制がない。しかし、昨年11月、中国の研究者がHIV感染を抑止するためにゲノム編集技術を用いた受精胚を使って双子を誕生させたと発表。これを重くみた政府は、国内でも法規制を含めた対応の必要性が高まったと判断した。指針の見直しも進めていく。
一方、ゲノム編集技術を用いたヒト胚を胎内に移植しない基礎的研究については、許容範囲を大幅に拡げる。報告書案では、余剰胚にゲノム編集を行う基礎研究は「将来的には、先天性・遺伝性疾患の病態解明・治療法の開発につながると考えられる」とし、「容認することが適当」とした。ミトコンドリア病研究を目的として核置換技術を用いる基礎研究も認める。調査会では今後、個別の研究計画の妥当性を審査する体制について、第三者組織の活用も視野に議論する。
新規胚の作成を伴う研究を巡っては調査会でも賛否が分かれ、引き続き容認の可否を検討することとなった。