尿中へ過剰なリン(P)を排泄できれば血清Pは上昇しない。しかし腎機能が低下,もしくは腎機能が正常でもP利尿ホルモンである副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone:PTH)の作用不全があると,尿中P排泄が低下して高P血症を呈する。また,尿中への排泄が間に合わないほど急速なP負荷が生じても血清Pは上昇する。
高P血症による特異的な症状はないが長期的な高P血症は血管石灰化などを介して生命予後悪化に関連する1)。家族集積性のある全身の巨大な石灰化を認めたら線維芽細胞成長因子23(fibroblast growth factors 23:FGF23)の分泌不全による家族性腫瘍状石灰化症(familial tumoral calcinosis:FTC)を疑う。検査では,まず腎機能を調べるために血清クレアチニンを測定して推定糸球体濾過量(estimate glomerular filtration rate:eGFR)を計算する。るい痩が著しい症例ではシスタチンCを用いたeGFRも参考にする。eGFR<30mL/分/1.73m2(CKDステージG4もしくはG5)では高P血症の頻度が増す2)。eGFR≧30mL/分/1.73m2の場合にはP利尿ホルモンの作用不全を疑って尿中P排泄分画,intact PTH(可能ならFGF23も。ただし保険適用外)を測定する。PTHが低下していれば副甲状腺機能低下症を疑う。PTHが低下していないにもかかわらず尿中P排泄が低下していれば,偽性副甲状腺機能低下症を疑って尿細管のPTH反応性を調べるためにEllsworth-Howard試験を検討する。
まず,溶血や高ビリルビン血症などによる偽性高P血症を除外する。急性の高P血症では血清カルシウム(Ca)の低下によってテタニーなどを引き起こすことがある。急性なP負荷をきたす原因として腫瘍崩壊症候群,横紋筋融解症,下部消化管内視鏡前処置としてのP含有下剤の使用,などが挙げられる。血中にPが大量に流入すると尿中へも排泄されるが,流入量と速度が大きければ血清Pは上昇する。また,尿細管内で大量のリン酸結石を形成して急性リン酸腎症と呼ばれる急性腎障害を引き起こす。重篤な場合は血液透析を要する。
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