糖尿病患者の3割が生涯で足潰瘍を生じ,25%が治癒せず,17%は切断に至ると報告されている
下肢の切断に至らないためには,何が原因で潰瘍を生じたのかを早期に判断し,適切な治療を行う必要があり,そのために神戸分類に基づく診断が有用である
欧米の報告では,糖尿病患者が生涯で足潰瘍を生じる可能性は34%であり,治療を行っても25%の足潰瘍患者が治癒せず,17%が切断術に至るとされている1)。また下肢切断の約75%は糖尿病性足潰瘍が原因であり,医療経済上も大きな負担となっている2)。
わが国でも糖尿病,末梢動脈疾患(peripheral arterial disease:PAD),透析人口の増加により,糖尿病性足潰瘍,重症下肢虚血(critical limb ischemia:CLI)の患者数は急増している。
現在,糖尿病が強く疑われる患者は1000万人おり,うち糖尿病性足潰瘍患者は少なくとも20万人,PADは400万人,末梢神経障害(peripheral neuropathy:PN)を有する患者は500万人と予想されている。
糖尿病性足潰瘍の分類は,世界的にはWagner分類3)やTexas大学の創傷分類4),CLIではWIfI分類5)が有名であるが,複雑で治療に直接結び付きにくく,また肥満を伴う欧米の糖尿病患者向けである。
欧米のような足を専門に診る医師,足病医(podiatrist)が存在しないわが国においては,より簡潔で治療へのアルゴリズムがわかりやすい分類が必要と考えられ,提唱されたのが神戸分類6)である。