【質問者】
長瀬満夫 長瀬クリニック院長
【炎症反応を伴う関節痛を認める患者においては,血管炎症候群の可能性に留意】
多くの膠原病疾患が,関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)やPMRに類似した筋骨格症状を示すことがあります。血管炎症候群も関節炎を合併するケースや,非特異的な関節痛,筋痛を伴うケースがあるため,炎症反応を伴う関節痛を認める患者の鑑別診断において,血管炎症候群の可能性も留意する必要があります。血管炎症候群は中小型血管炎と大型血管炎に大きく別れます。
大型血管炎はGCAと高安動脈炎が含まれます。高安動脈炎は通常40歳以下に発症し女性に多く,大動脈と大動脈分枝に血管炎を発症し,診断には画像診断が必須となります。高安動脈炎においても関節炎や非特異的関節痛,筋痛を自覚することがあります。若年女性の多関節炎の鑑別診断では,その頻度は少ないことから上位にくることはありませんが,RAの分類基準を満たさないような非特異的な筋骨格症状と持続する炎症反応を認める場合は,頸部や胸部,腹部の血管雑音,頸動脈の血管痛,四肢末梢動脈の拍動低下,四肢跛行症状などの身体所見に留意しつつ,画像診断の検討のため専門医へ紹介することが望ましいです。
GCAは通常50歳以上に発症し,側頭動脈,顎動脈,眼動脈領域,大動脈,大動脈分枝を中心に血管炎を認めます。30~50%にPMRを認め,PMRが先行するケースもあります。欧米の報告ではGCAに合併したPMRの約40%は,血管炎症状よりPMR症状が先行します。GCAに合併するPMRでも末梢関節症状は40%程度で合併するため,抗cyclic citrullinated peptide(CCP)抗体陰性の高齢RA患者の診断時にはPMR,GCA合併PMRを鑑別診断として考えます。またPMRの経過中にGCAを合併する頻度は25%程度あるため,PMRと診断後もGCAの合併の可能性は念頭に置く必要があります。
残り1,108文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する