【術後療法のエビデンスが確立してきており,術前療法が検証されている】
根治切除を行ったpStage Ⅱ・Ⅲの胃癌症例の術後補助化学療法は,S-1単剤の1年間内服1),もしくはカペシタビン+オキサリプラチン併用療法6カ月2)がわが国の標準治療になっている。2018年にpStage Ⅲの症例に対してS-1+ドセタキセル併用療法(JACCRO GC-07)の有用性が米国臨床腫瘍学会(ASCO)で報告され,今後標準療法になる可能性が高い。
一方で,胃癌に対する術前化学療法は標準治療が確立されていない。手術単独では予後不良な,高度リンパ節転移を伴う進行胃癌に対してS-1+シスプラチン併用療法の有効性が第2相試験(JC OG0405)で示されてきた。HER2陽性の高度リンパ節転移症例に対する,S-1+シスプラチン+トラスツズマブ併用療法の第2相試験(JCOG1301C)が行われている。大型3型・4型胃癌に対するS- 1+シスプラチン併用療法は,第3相試験(JCOG 0501)で有用性が示せなかった。高度リンパ節転移を伴わず,大型3型・4型でもないcT3-4/N1-3の局所進行胃癌における術前S-1+オキサリプラチン併用療法,術後S-1±ドセタキセル療法の周術期化学療法を検証する第3相試験(JCOG1509)が登録中である。
術前画像による正確なStage診断は難しく,術前化学療法の治療効果判定にも限界があり,今後の課題である。胃癌補助化学療法の検証が進み,進行胃癌のさらなる治療成績向上が期待される。
【文献】
1) Sakuramoto S, et al:N Engl J Med. 2007;357 (18):1810-20.
2) Bang YJ, et al:Lancet. 2012;379(9813):315-21.
【解説】
掛地吉弘 神戸大学食道胃腸外科教授