妊娠高血圧症候群(HDP)の定義に,従来含まれていなかった高血圧合併妊娠(CH)も含めるようになり,“妊娠時に高血圧を認めた場合,妊娠高血圧症候群とする”と変更になった
HDPの病型分類が,子癇を削除し,CHを加えたⅠ.妊娠高血圧腎症(PE),Ⅱ.妊娠高血圧(GH),Ⅲ.加重型妊娠高血圧腎症(SPE),Ⅳ.高血圧合併妊娠(CH),に変更となった
PEの定義が,高血圧と母体臓器障害,子宮胎盤機能不全を認める場合は,蛋白尿を認めなくても妊娠高血圧腎症とすることになった
HDPは,従来のように蛋白尿の多寡による重症度分類は行わず,高血圧が重度の場合あるいは母体の臓器障害,子宮胎盤機能不全を認める場合に重症とすることになり,軽症は削除された
HDPの早発型の定義は海外に合わせて,従来の妊娠32週から“妊娠34週未満に発症するもの”に変更になった
わが国の妊娠高血圧症候群(hypertensive disorders of pregnancy:HDP)の定義と病型分類は,1962年に晩期妊娠中毒症として初めて作成された。その定義は,妊娠後半期に初めて浮腫,蛋白尿,高血圧などを主症状として,時折,昏睡,痙攣,呼吸困難,腹痛,急性貧血などの重篤な症状を伴って現れ,分娩終了とともに多くは治癒ないし軽快する症候群とし,Ⅰ.純粋妊娠中毒症,Ⅱ.混合妊娠中毒症,Ⅲ.特殊妊娠中毒症〔子癇(eclampsia),妊娠中毒症肺水腫,子宮胎盤溢血〕,Ⅳ.妊娠中毒症後遺症の4分類として作成された。その後,改定作業が行われ,1985年に妊娠中の「高血圧」「蛋白尿」「浮腫」を三主徴として診断される「妊娠中毒症(toxemia of pregnancy)」としての定義と病型分類が発表された。ここでは,Ⅰ.純粋妊娠中毒症,Ⅱ.混合妊娠中毒症,Ⅲ.子癇の3分類とし,その後一部改変されたが,2004年に「妊娠高血圧症候群」と疾患名称を改称するまでわが国において広く使用された。