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関節リウマチ疑い患者への検索事項

No.4970 (2019年07月27日発行) P.51

田中良哉 (産業医科大学医学部第1内科学講座教授)

登録日: 2019-07-27

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60歳,男性。身長165cm,体重58kg,農業者。
現病歴:20XX年7月8日受診,37.1℃。3日前から全身の筋肉痛,前日は38.7℃の発熱あり。かぜの症状はなく,軽度の頭痛を訴えていました。インフルエンザ抗体検査(-)。
同年7月11日再受診,36.5℃。筋肉痛と両肩・股・膝などの関節痛を訴えていました。両手指,両手関節の腫脹や疼痛はなく,朝の手のこわばりもありませんでした。皮疹(-),肩関節や手指,手関節などのX線検査では異常なさそうでした。検査所見は(表1)の通り。



経過:同年7月11日より関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)などを考え,プレドニゾロン(プレドニン錠5mg)を1日2錠(計10mg)投与。あちこちの痛みは軽減して,最初は高値を示していた肝機能やCRPはほぼ正常となりましたが,同年10月に1日5mgに減量したところ,肩などの痛みが増強し再び10mgに戻しました。
同年11月からRAに類似した病態を考え,プレドニゾロンにメトトレキサート(MTX)を週3回(朝・夕・翌日朝)計6mg併用し,現在も継続中です。MTXの著明な効果はなさそうでしたが,痛みが少し軽減しているようでプレドニゾロンを10mgより9mg,8mgと漸減(7mgにしたところ痛みが少し強くなったということで現在は8mg維持)。食欲は普通で全身状態は良好です。
(1)鑑別診断として,最初の肝機能異常などもあり,何らかの急性ウイルス性炎症を考えました。また,経過は典型的ではありませんが,RA,リウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica:PMR)なども考えています。確定診断できませんが,追加するべき検査事項などがあれば。
(2)現在プレドニゾロン8mgで普通の日常生活を送っていますが,このままでよいのか,RAに準じて生物学的製剤などの注射を試みるべきでしょうか。

(宮城県 A)


【回答】

【診断確定後,速やかに合成抗リウマチ薬で治療し,臨床的寛解に導入する】

RAは,関節滑膜炎を病態の主座とする全身性自己免疫疾患です。多関節の疼痛・腫脹やこわばり等の臨床症候に加え,関節破壊は発症早期から進行するため,早期からの適正な診断と治療が必要です。

治療の基本方針は,まずRAとの診断を確定し,速やかにMTX等の合成抗リウマチ薬で治療介入し,臨床的寛解に導入することです。逆に言うと,診断が確定しなければMTX等の治療介入をすべきではありません。いずれの抗リウマチ薬も副作用が少ないとは言えないからです1)

(1)鑑別診断

診断には,米国と欧州のリウマチ学会(ACR/EULAR)が策定した「RA分類基準」が汎用されます2)。第1段階では,1つ以上の関節炎を有する多彩な疾患と鑑別します。第2段階では,関節炎(小または中・大関節の腫脹),血清学的検査,罹病期間,急性期反応の4項目に重みづけをして加算し,10点満点中6点以上をdefinite RAと分類します(図1)。RAと診断し,禁忌がなければMTXを速やかに開始します。

本症例では,関節腫脹を認めず,分類基準では2点となり,RAの診断に至らない可能性が高いと思われます。したがって,MTXの適応とはならず,速やかな投与中止を勧めます。

(2)治療

日本リウマチ学会の「関節リウマチ診療ガイドライン2014」では,「初期治療は,十分な知識と治療の経験を持つ医師が行うべき」とされていますので,MTXを中止した上で専門医への受診を勧めます。一方,十分量のMTX投与において,3カ月以内に改善がない,または6カ月以内に目標である寛解に到達しない症例には,バイオ抗リウマチ薬(生物学的製剤)が推奨されます3)。しかし,本症例のように診断が確定されなければ適応にはなりません。

(3)本症例の診断と治療

本症例は60歳,両側肩関節痛,CRPまたは赤沈の著明な上昇などから,PMRが考えられます。本疾患は,頸,肩,上腕,腰部に1カ月以上続く疼痛とこわばりを主徴とする50歳以上に多い疾患で,赤沈亢進やCRP上昇を伴います。これらの筋症状,関節症状に加えて,微熱,倦怠感,食思不振,体重減少等の全身症状を3主徴と言います。診断には,ACR/EULARの暫定基準等が使用されます(図2)4)。前提3条件は既に満たしていますので,図2に沿って点数化すれば診断に至るはずです。診断できなければ,ステロイドをいったん中止して臨床症候を十分に再評価し,炎症反応や超音波検査を実施してはいかがでしょうか。

本疾患の治療には,中等量の副腎皮質ステロイドが奏効します。臨床症候,炎症所見が制御できれば,その後は徐々に注意深く減量すれば,治癒が可能となるはずです。

【文献】

1) Smolen JS, et al:Ann Rheum Dis. 2010;69(4): 631-7.

2) Aletaha D, et al:Arthritis Rheum. 2010;62(9): 2569-81.

3) Smolen JS, et al:Ann Rheum Dis. 2017. [Epub ahead of print]

4) Dasgupta B, et al:Arthritis Rheum. 2012;64 (4):943-54.

【回答者】

田中良哉 産業医科大学医学部第1内科学講座教授

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