(宮城県 A)
【診断確定後,速やかに合成抗リウマチ薬で治療し,臨床的寛解に導入する】
RAは,関節滑膜炎を病態の主座とする全身性自己免疫疾患です。多関節の疼痛・腫脹やこわばり等の臨床症候に加え,関節破壊は発症早期から進行するため,早期からの適正な診断と治療が必要です。
治療の基本方針は,まずRAとの診断を確定し,速やかにMTX等の合成抗リウマチ薬で治療介入し,臨床的寛解に導入することです。逆に言うと,診断が確定しなければMTX等の治療介入をすべきではありません。いずれの抗リウマチ薬も副作用が少ないとは言えないからです1)。
診断には,米国と欧州のリウマチ学会(ACR/EULAR)が策定した「RA分類基準」が汎用されます2)。第1段階では,1つ以上の関節炎を有する多彩な疾患と鑑別します。第2段階では,関節炎(小または中・大関節の腫脹),血清学的検査,罹病期間,急性期反応の4項目に重みづけをして加算し,10点満点中6点以上をdefinite RAと分類します(図1)。RAと診断し,禁忌がなければMTXを速やかに開始します。
本症例では,関節腫脹を認めず,分類基準では2点となり,RAの診断に至らない可能性が高いと思われます。したがって,MTXの適応とはならず,速やかな投与中止を勧めます。
日本リウマチ学会の「関節リウマチ診療ガイドライン2014」では,「初期治療は,十分な知識と治療の経験を持つ医師が行うべき」とされていますので,MTXを中止した上で専門医への受診を勧めます。一方,十分量のMTX投与において,3カ月以内に改善がない,または6カ月以内に目標である寛解に到達しない症例には,バイオ抗リウマチ薬(生物学的製剤)が推奨されます3)。しかし,本症例のように診断が確定されなければ適応にはなりません。
本症例は60歳,両側肩関節痛,CRPまたは赤沈の著明な上昇などから,PMRが考えられます。本疾患は,頸,肩,上腕,腰部に1カ月以上続く疼痛とこわばりを主徴とする50歳以上に多い疾患で,赤沈亢進やCRP上昇を伴います。これらの筋症状,関節症状に加えて,微熱,倦怠感,食思不振,体重減少等の全身症状を3主徴と言います。診断には,ACR/EULARの暫定基準等が使用されます(図2)4)。前提3条件は既に満たしていますので,図2に沿って点数化すれば診断に至るはずです。診断できなければ,ステロイドをいったん中止して臨床症候を十分に再評価し,炎症反応や超音波検査を実施してはいかがでしょうか。
本疾患の治療には,中等量の副腎皮質ステロイドが奏効します。臨床症候,炎症所見が制御できれば,その後は徐々に注意深く減量すれば,治癒が可能となるはずです。
【文献】
1) Smolen JS, et al:Ann Rheum Dis. 2010;69(4): 631-7.
2) Aletaha D, et al:Arthritis Rheum. 2010;62(9): 2569-81.
3) Smolen JS, et al:Ann Rheum Dis. 2017. [Epub ahead of print]
4) Dasgupta B, et al:Arthritis Rheum. 2012;64 (4):943-54.
【回答者】
田中良哉 産業医科大学医学部第1内科学講座教授