サルコイドーシスは原因不明の慢性,全身肉芽腫性疾患で,通常肺とリンパ節に病変がみられるが,全身のあらゆる臓器に病変は出現しうる。やや女性に多く,好発年齢は40歳以下の成人で20歳代にピークがあると言われているが,わが国では50歳代にもピークがあり,二相性を示す。発症には人種差や地域差があり,一般に北に多く,南に少ない。わが国の患者数は欧米に比し少なく,推定有病率は人口10万人当たり7.5~9.3人,罹患率は年間人口10万人当たり1人前後である。
特徴的な画像所見(両側肺門リンパ節腫脹,CT画像における気管支血管束の肥厚やリンパ路に沿った,すなわち,小葉中心性/辺縁性に分布する多発粒状陰影)より本症を疑い,気管支鏡検査を行う。経気管支肺生検で,本症に特徴的な壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫が認められれば本症の可能性が高く,他の肉芽腫疾患が除外されれば,本症と診断できる(組織診断群)。あるいは他臓器(皮膚など)に病変があり,同部位からの生検で壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫が認められた場合も本症と診断できる(組織診断群)。経気管支肺生検で壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫が認められない場合,経気管支肺生検が施行できない場合,あるいは皮膚などの生検可能部位に病変がない場合は,肺以外に眼あるいは心臓に本症を強く疑う所見を認め,かつ特徴的な検査所見(①両側肺門リンパ節腫脹,②血清ACEまたはリゾチーム値高値,③可溶性IL-2受容体高値,④GaシンチまたはFDG-PETにおける著明な集積所見,⑤気管支肺胞洗浄液でリンパ球比率上昇かつCD4/CD8比が3.5を超える上昇を示す)のうち,2項目以上陽性の場合,本症と診断できる(臨床診断群)。
本症の病態は,未知の抗原に対する遅延型アレルギー反応(Th1系免疫反応)と考えられており,治療にはステロイドホルモンが用いられるが,本症の原因は不明であり,同薬は根治治療ではないことを理解しておく必要がある。また,治療を考える際には,本症には自然改善を示す症例があること,本症は必ずしも予後不良な疾患ではないことを理解することが重要である。つまり,本症と診断されても,すべての症例がすぐに薬物治療の対象となるわけではない。また,ステロイドホルモンによる治療を開始した場合,その投与は年単位に及ぶことが多く,本剤による様々な副作用の出現が危惧されるため,治療のメリットとデメリットのバランスを慎重に検討する必要がある。
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