好酸球性筋膜炎は1974年にShulmanにより言及された稀な線維化疾患であり,40~50歳代に発症することが多い1)。28%の患者では運動が誘因となったと報告されている。そのほかにも血液透析,Borrelia burgdorferi感染等が誘因となることがあるとされる2)。
典型的には四肢硬化に引き続き起こる突然発症の浮腫で発症する。左右対称の病変が多いが片側性の病態も存在する“orange peel appearance(四肢皮膚表面凹凸)”“groove sign(表皮静脈に沿った皮膚の陥凹)”等が診断に有用である。
血液検査:好酸球数,赤血球沈降速度,血清中アルドラーゼ値が診断および疾患活動性評価を行う上で重要となる。
画像検査:MRI T2強調画像で筋膜の高信号がみられる。造影MRIでは炎症波及により筋膜周囲の造影効果がみられることもある。MRI所見は生検部位選定の上で重要となる。
皮膚生検:皮膚から筋膜までの一括生検が推奨され,病初期は筋膜および深部皮下組織の浮腫,リンパ球,形質細胞,組織球,好酸球等の浸潤がみられる。病期進行に伴い表皮の萎縮,筋膜肥厚,皮下組織のコラーゲン線維束の肥厚がみられるようになる。なお,punch biopsyは推奨されない。
大項目:a左右対称性または非対称性の全般性または限局的浮腫,皮膚および皮下組織硬化,b病変部皮膚生検でリンパ球・マクロファージ集簇を伴った筋膜肥厚がみられること(好酸球浸潤の有無は問わない)。
小項目:a末梢血好酸球数上昇>0.5×109/L,b高ガンマグロブリン血症>1.5g/L,c筋力低下および/またはアルドラーゼ上昇,dgroove signおよび/またはorange peel appearance,eMRI T2強調画像で筋膜高信号。
大項目2項目または大項目1項目および小項目2項目を満たし全身性強皮症の除外を行うこと,で診断となる2)。
10~20%の患者で発症2~5年後に自然軽快がみられることがあるが,線維化病変の残存を防ぐために,好酸球性筋膜炎を診断した場合には治療を推奨する3)。
確立された治療レジメンはないが,治療の基軸はステロイドとなる。長期使用による副作用リスクの懸念から免疫抑制薬併用が重要となる。治療法に苦慮する場合や免疫抑制薬使用経験が少ない場合は,膠原病科のコンサルトも検討が必要である。
自己免疫性甲状腺炎,全身性エリテマトーデス,関節リウマチ,再生不良性貧血,悪性リンパ腫,白血病,骨髄異形成症候群,固形腫瘍(前立腺癌,乳癌)などの合併の報告があるため,上記併存症の可能性についての評価も行う必要がある。
また,全身性強皮症との鑑別が重要であり,好酸球性筋膜炎では手指や顔面の皮膚硬化,Raynaud現象,nail fold capillary changeがみられず,一般的に抗核抗体が陰性である。これに加えて,好酸球性筋膜炎では“orange peel appearance”“groove sign”が出現することや,好酸球増多やガンマグロブリン上昇がみられることも鑑別の上で重要である2)。
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