【治療への期待度がその後の経過に与える影響】
早期からの専門的緩和ケアでは,がん患者のコーピングスキルの向上を介してQOL向上に寄与することが報告されている1)。通常ケア群と比較して,早期緩和ケア群では24週時点でのアプローチ志向型コーピングが増加していた。
コーピングや治療への期待度は,プラセボ効果に関与する要因として重要である。がん患者の痛みに対するモルヒネ反応性において,治療前のポジティブな期待度は,痛みの経過に良い影響を与える2)。化学療法による初回治療における期待度もまた有害事象を減少させる。
医療者には,重篤な疾患に対する患者のコーピングを効果的に高める支援が望まれる。がん患者介護者に対するリラクセーションの導入において,導入時に心地良い感覚を体験した群は,コーピングへの期待度を高めたことで,その後のQOLが向上することが報告されている3)。これは,導入時における体験的気づき(例:オピオイド徐放製剤投与前における速放製剤での鎮痛体験,リラクセーション導入時における生理的変化体験)の大切さを示唆している。緩和ケア領域においてコーピングスキルを導入したが,再診で患者がそれを取り入れていなかったとしても,患者のアドヒアランスの問題だけではないのである。
【文献】
1) Greer JA, et al:J Clin Oncol. 2018;36(1):53-60.
2) Matsuoka H, et al:Int J Behav Med. 2017; 24(4):535-41.
3) Hasuo H, et al:Biopsychosoc Med. 2018;12:16.
【解説】
蓮尾英明 関西医科大学心療内科/ 関西医科大学附属病院緩和ケアチーム講師