【質問者】
玉井克人 大阪大学大学院医学系研究科再生誘導医学寄附講座教授
【同じ遺伝子変異が複数同定されても,臨床的に有意義なデータになりうる】
皮膚科領域で取り扱う遺伝性皮膚疾患は,皮膚症状を主体として主に皮膚科で診療される疾患(フェルナー型掌蹠角化症など)に加えて,皮膚以外の他臓器にも症状があるために,内科,小児科など他科との連携が必要,あるいは他科で主体的に診療されている疾患(ファブリー病など)も含まれます。したがって,遺伝子診断の対象となる疾患の種類が非常に多いのが特徴です。当施設では遺伝性ポルフィリン症や表皮水疱症を中心に,40種類以上の疾患と60種類以上の原因遺伝子を対象に遺伝子診断を行っています。
2018年度は遺伝性疾患が疑われた患者およびその家族を合わせて229人の検体について遺伝子変異解析を行いました。その中にはファブリー病が疑われた患者50人が含まれますが,それらはほぼすべて皮膚科以外の科からの依頼です。
実際に遺伝子診断を行って苦慮する点は,臨床診断から推定された原因遺伝子に,発症の原因となる遺伝子変異が見つからない場合です。この場合にはもう一度振り返って臨床診断を確認することになりますが,限られた臨床情報から臨床診断を決めるのは容易でないことがわかります。逆に言えば,臨床診断を確定できないために,遺伝子診断で最終診断を決定したいというニーズがあるのが現状と思われます。
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