逆流性食道炎以外の重要な食道炎として,最近注目されている好酸球性食道炎が挙げられる。好酸球性食道炎は慢性アレルギー疾患で,①食道運動障害に基づく症状と,②上皮内好酸球浸潤を高視野に15個以上認めること,が診断基準である。以前はプロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor:PPI)が有効な症例はPPI反応性食道好酸球浸潤(PPI-responsive esophageal eosinophilia:PPI-REE)として別の疾患概念とされていたが,現在では好酸球性食道炎に含まれる。そのほか頻度の高い食道炎として,主にCandida albicansによるカンジダ食道炎と放射線性食道炎などが挙げられる。
上部消化管内視鏡検査および生検が有用である。特徴的な内視鏡所見,縦走溝,リング,白斑,浮腫(好酸球性食道炎),白色小隆起散在(カンジダ食道炎)から診断できることが多い。
好酸球性食道炎では粘膜生検が確定診断に必須である。カンジダ食道炎ではHE(hematoxylin-eosin)染色のほか,PAS(periodic acid schiff)染色も有効である。そのほか,食道造影,胸部CT検査,アレルギー検査などの血液検査が行われる。
健常人でも軽症カンジダ食道炎は起こりうるが,通常免疫低下状態で発症するので,基礎疾患がなく高度の所見を認める症例では,HIV感染症の除外を考慮する。放射線性食道炎では,治療歴と内視鏡による粘膜傷害の存在から診断する。
好酸球性食道炎では軽度の症状を訴える症例が多く,酸分泌抑制薬が1/2〜2/3の症例で有効であることから,第一選択としてPPIやカリウム競合型アシッドブロッカー(potassium-competitive acid blocker:P-CAB)を投与する。無効な場合はステロイド嚥下療法を行う。症状に応じて少量のステロイド嚥下を維持することがある。狭窄の強い症例では,バルーン拡張術あるいは摂食困難例では全身ステロイド投与を行うが,わが国では稀である。
食事抗原が原因と考えられるが,同定することは困難である。6種(卵,ミルク,小麦,大豆,豆類,魚介類)除去食の有効性が海外では報告されているが,成人での実施はきわめて困難なことが多い。好酸球性食道炎はしばしば健診で偶然みつかるケースがある。まったく無症状から詳細な問診により軽度の症状を訴える場合があり,多くはPPIやP-CABが有効である。無症状の場合,経過観察を行うことが多いが,その自然史は十分に明らかとなっていない。
カンジダ食道炎では粘膜傷害の程度により抗真菌薬を投与する。放射線性食道炎では粘膜保護薬の投与を行い,必要に応じて非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)など鎮痛薬を併用する。
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