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特集:どうする? この腹水

No.4991 (2019年12月21日発行) P.18

石井孝政 (獨協医科大学埼玉医療センター総合診療科学内准教授)

登録日: 2019-12-23

最終更新日: 2019-12-19

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執筆:石井孝政(獨協医科大学埼玉医療センター総合診療科学内准教授)



2004年に金沢医科大学を卒業。2014年に東邦大学医療センター大森病院総合診療・急病センターを経て2018年より現職

1 腹水について
・腹水とは,様々な機序により腹腔内に貯留した体液のことを指す。
・腹水の発症機序には,血漿膠質浸透圧,門脈圧,血行動力学など以外に,腹膜の炎症による滲出,リンパ管の破綻,腹腔内での出血などが関与している。
・腹水の原因として最も多いのは肝硬変による腹水とされている。
・肝硬変による腹水の機序について解説すると,肝硬変による腹水では門脈圧亢進が主な原因となっている。
・また,肝硬変ではアルブミンの合成能が低下することにより血漿膠質浸透圧が低下するため,血管からの腹腔内への液体喪失を助長する。

2 自覚症状・身体所見について
(1)自覚症状
・腹水貯留の自覚症状としては,「お腹が出てきた」,「お腹が張ってきた」,「お腹が苦しい」,「臍が出てきた」など様々である。これらの自覚症状が数日単位で急性に認めたのか,月単位または年単位で認めたのか,それら発症様式により想起する疾患が変わってくる。また,その患者の背景や随伴症状も診断の手掛かりとなる。
(2)身体所見
・身体所見については,腹水貯留の身体所見として「波動触知」が一般的だと思うが,どの程度腹水が溜まると身体所見として認めることができるだろうか。

3 腹水の原因・鑑別診断
・問診や身体所見で腹水貯留を疑った際には,実際に腹水が溜まっているかを腹部超音波検査や腹部CTで確認する必要がある。
・ 腹水貯留の原因で最も多いのは肝硬変で,次いで悪性疾患とされている。
・それらを鑑別するためには後述する腹水穿刺が必要になり,穿刺液の結果から鑑別を行っていく。
・しかし腹水の量が少なかったり,腸管などの臓器のために安全に穿刺ができない場合には,安全を考慮し無理をしないことも重要と考える。
・腹水量が少なく穿刺困難にもかかわらず,腹水穿刺にて診断をつけなければならない場合,臨床的に「待てる」(自覚症状に乏しい,バイタル変動がない,全身状態が悪くない,進行速度が緩徐など)場合には,腹水が貯留するのを待ってから,安全に穿刺するのも1つの方法ではないかと考えている。

4 腹水穿刺の実際
・腹水穿刺は診断としての穿刺と,症状緩和を目的とした治療としての穿刺がある。治療としての腹水穿刺は,利尿薬に抵抗性の際に考慮される。また,適応疾患によっては腹水濾過濃縮再静注法も考慮される。
・基本的な手技としては,患者を仰臥位にし,①マーキング→②消毒→③試験穿刺→④本穿刺→⑤留置である。穿刺部位については安全な部位であればどこでもよいが,一般的には逆McBurney点が安全とされている。

5 症例
・実際の腹水貯留の症例を提示する。
・先述のように腹水貯留の最も多い原因は肝硬変によるものだが,今回はそれ以外の症例として,症例1:腰痛を主訴に受診した腹水貯留症例,症例2:腹痛を主訴に受診し,自然消失が期待できる腹水貯留症例を提示する。

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