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特集:3つの技術でアプローチ!不定愁訴入門

No.4995 (2020年01月18日発行) P.18

西山順滋 (関西医科大学心療内科学講座診療講師/関西医科大学附属病院総合診療科科長)

登録日: 2020-01-17

最終更新日: 2020-01-15

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1997年兵庫医科大学卒業。1999年関西医科大学心療内科学講座入局,滋賀医科大学医学部附属病院総合診療部勤務を経て,2012年より現職

1 不定愁訴とは
・ 不定愁訴の定義:全身倦怠感,下肢倦怠感,易疲労性,頭重,動悸,息切れ,手足のしびれ感,食欲不振,胃のもたれ,腹部不快感など,漠然とした身体的愁訴で,しかもそれに見合うだけの器質的疾患の裏づけがない場合。
・「不定愁訴群」と言われてきたこのような疾患群は,近年,医学的に説明困難な身体症状(medically unexplained symptoms:MUS),機能性身体症候群(functional somatic syndromes:FSS)などと表現されている。
・ MUS患者の割合は,プライマリ・ケア領域で30~40%とされており,診療時間,過剰な検査の回避など,費用対効果の面からも適切な対応が求められる。

2 不定愁訴はどうやって診ればよいか
・ 器質的身体疾患(薬剤性も含む),精神疾患を除外した後,機能性疾患をしっかり意識することが重要。
・精神疾患の除外においては,適切なタイミングでの精神科紹介が不可欠であるが,PIPC研究会による研修会の受講も有用である。
・うつ病のスクリーニングはどの医師も行えるべきである。

3 機能性疾患への対応
・ 医療者が疾患概念を理解し,患者に適切な病態説明を行うことが重要となる。
・ 病態説明とは,「医療者側の解釈モデル」を説明することを意味する。疾患が発症する原因,メカニズム,関連する因子などを患者が十分に納得できること,かつ医学的に矛盾しないことが求められる。
・ 「自律神経失調症」についてわかりやすく説明することが重要。

4 心身医学的アプローチとは
・ 心療内科では身体的な症状と心理社会的要因との関連を明らかにし,心身両面から治療することにより症状の改善を図る。このときに用いられる種々の方法を総称して「心身医学的アプローチ」(心身医学的療法)と呼ぶ。
・ 関西医科大学心療内科学講座では「基本的な心身医学的アプローチ(basic psychosomatic approach:BPA)」を提唱し,一般診療科医師に実践して頂きたい3つの技術として啓発している。

5 3つの技術を不定愁訴患者に活用しよう!
(1)BPA-1:患者の話しを聴く技術(解釈モデルの確認)
・ 医療者にとって,診療が始まってからできるだけ早い段階で患者側の解釈モデルを把握することが重要である。
(2)BPA-2:丁寧な身体診察技術(症状の再現,医師と患者の共通理解)
・ 診察場面で患者が経験している症状の再現を行い,医師と患者の双方が理解を深める。
・ 患者にとって,症状を認める部位を医療者に触れられることで,その辛さを理解・共有してもらえたと実感できる貴重な機会となるであろう。
(3)BPA-3:心理社会的背景に目を向ける思考技術
・ 従来の問診項目に加えて是非とも確認したい内容。
→家族構成・年齢,生活リズム,職業,ストレス要因・ストレスコーピングの有無

6 時間をかけずに診療を行うには
①問診票,パンフレットを利用する
②患者側の解釈モデルを早いタイミングで聴取する→3つの質問
③暫定診断名をしっかり伝える→ラベリング

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