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妊娠糖尿病の診断基準改訂による意義や有用性,母児の予後に関する新知見は?

No.5005 (2020年03月28日発行) P.49

成瀬勝彦 (奈良県立医科大学産婦人科講師)

増山 寿 (岡山大学大学院医歯薬学総合研究科産科・婦人科学教授)

登録日: 2020-03-26

最終更新日: 2020-03-24

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  • 世界的な研究の結果をもとにわが国で先行して妊娠糖尿病(gestational diabetes mellitus:GDM)の診断基準が改訂されて普及が進みましたが,これによる実地臨床での意義や有用性,母児の予後との関連に関して新しい知見が得られているでしょうか。岡山大学・増山 寿先生にご教示を賜りたく存じます。

    【質問者】

    成瀬勝彦 奈良県立医科大学産婦人科講師


    【回答】

    【軽症GDM妊婦への介入,産後の母体GDMおよび出生児の肥満・DM発症など検討課題は多い】

    わが国におけるGDMの定義は,従来「妊娠中に糖忍容力の低下を認めるが,分娩後に正常化するもの」とされていましたが,妊娠中のGDM診断ができないことや周産期合併症のリスクに分娩後の耐糖能異常の正常化が必ずしも関係しないことから,1995年には「妊娠中に発症もしくは初めて発見された耐糖能低下をいう」とされました。この定義では妊娠前から存在が見逃されていた耐糖能異常もGDMとされることもあり,2010年のInternational Association of Diabetes and Pregnancy Study Groups(IADPSG)の提案をわが国でも採り入れ,「妊娠中に初めて発見または発症した糖尿病に至っていない糖代謝異常で,妊娠中の明らかな糖尿病は含めない」とされ今日に至っています。

    わが国のGDM診断基準は,2010年にIADPSGが発表した国際診断基準に統一すべく改訂されました。改訂された点は,糖負荷試験の空腹時と2時間値基準がわずかに変更になったのに加えて,大きな点は2ポイントから1ポイント以上陽性への変更です。このためGDMの頻度が,旧基準の2~3%から新基準では8~12%と約4倍増加しています。費用対効果を考慮し診断基準を変更した国もあります。また診断時期は,妊娠24~28週であり,妊娠初期の診断基準はいまだエビデンスに乏しいのが現状です。

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