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好酸球性肺炎[私の治療]

No.5006 (2020年04月04日発行) P.42

廣瀬正裕 (藤田医科大学医学部呼吸器内科学Ⅱ講座准教授)

堀口高彦 (藤田医科大学医学部呼吸器内科学Ⅱ講座教授・藤田医科大学総合アレルギーセンターセンター長)

登録日: 2020-04-07

最終更新日: 2020-03-31

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  • 好酸球性肺炎は,肺実質や間質に好酸球が著明に浸潤する疾患である。好酸球性肺疾患をきたす疾患は数多くある。他の代表的な好酸球性肺疾患として,全身性疾患の好酸球性肉芽腫性多発血管炎,寄生虫感染,薬剤誘発性,アレルギー性気管支肺アスペルギルス症などがある。原因が不明な疾患に急性好酸球性肺炎と慢性好酸球性肺炎がある。

    ▶診断のポイント

    【慢性好酸球性肺炎】

    疫学:30~40歳代の女性,アレルギー疾患(気管支喘息やアレルギー性鼻炎など)を随伴または先行することが多い。しばしば再発を繰り返す特徴がある。

    症状:咳嗽,発熱,進行性の息切れ,喘鳴など。

    診断基準:末梢血好酸球増多,画像上中肺野および上肺野に多くみられ,非区域性の浸潤影,末梢優位のすりガラス陰影がみられる1)。また,気管支肺胞洗浄液の好酸球分画10%以上,胸腔鏡下肺生検や経気管支肺生検で好酸球の浸潤がある1)

    【急性好酸球性肺炎】

    疫学:若い男性に多く,喫煙や粉塵吸入などの関係が示唆されている。アレルギー疾患の合併や再発例は少ない。

    症状:短期間(通常7日)の経過を示し,咳嗽,発熱,呼吸困難などがあり,胸膜炎による胸痛を示すことがある。

    診断:末梢血好酸球数増加は少なく,画像上胸部X線写真で両側びまん性浸潤影,胸部CTでは両側の斑状陰影,すりガラス陰影がみられる。しばしば胸水貯留を伴う。また,気管支肺胞洗浄の好酸球分画25%以上,経気管支肺生検で著明な好酸球の浸潤がある。原因として喫煙などが疑われる場合,専門施設におけるチャレンジテストを行う場合もある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    まずは,通常の細菌性肺炎などの感染症として,抗菌薬治療を行ったにもかかわらず改善しない場合や,末梢好酸球数増加,アレルギー疾患(気管支喘息やアレルギー性鼻炎など)を随伴または先行している場合は,好酸球性肺炎を疑う。しかし,特発性器質化肺炎などとの鑑別や,他の好酸球性肺疾患である全身性疾患の好酸球性肉芽腫性多発血管炎,寄生虫感染,薬剤誘発性,アレルギー性気管支肺アスペルギルス症などとの鑑別が重要である。

    好酸球性肺炎は自然に軽快する場合もあるが,通常はステロイド(プレドニン®)の投与が行われる場合がほとんどである。慢性好酸球性肺炎,急性好酸球性肺炎ともにステロイド(プレドニン®)への反応性は良く,予後良好である。しかし,急性好酸球性肺炎は急激な発症をきたす場合があり,急性呼吸不全を呈する場合はステロイド(ソル・メドロール®)のパルス療法,人工呼吸器装着が必要となる例もある。慢性好酸球性肺炎は再発を繰り返す症例が多く,ステロイド(プレドニン®)の長期投与を余儀なくされる症例がある。その場合,重症喘息を合併し,喘息コントロールが不良の場合に抗IL-5抗体(ヌーカラ®),抗IL-5受容体α抗体(ファセンラ®)などの生物学的製剤の使用を考慮する。

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