結節性多発動脈炎(polyarteritis nodosa:PAN)は,血管炎症候群の中でも稀な疾患である。PANは抗好中球細胞質抗体と関連がなく,かつ細動脈以下の小型血管(細動脈・毛細血管)を侵さない中・小型の血管炎であり,わが国で多い顕微鏡的多発血管炎と区別される。平均発症年齢は55歳で,やや男性に多い。以前示唆されたB型肝炎ウイルスの関与は,最近の症例ではきわめて乏しくなっている。
厚生労働省より診断基準が示されている(難病情報センター,指定難病42)。組織学的にフィブリノイド変性を伴う壊死性血管炎を認めるが,顕微鏡的多発血管炎,多発血管炎性肉芽腫症,好酸球性多発血管炎性肉芽腫症,川崎動脈炎,IgA血管炎,全身性エリテマトーデスなど,他の膠原病との鑑別が必要である。また,近年のトピックスとして,adenosine deaminase 2欠損症(DADA2)がPANと同様の周期性発熱,皮膚症状,血管障害をきたすこと1)からPANに紛れている可能性が報告されている。
副腎皮質ステロイド,免疫抑制薬による治療が必要かどうかをまず見極めることが重要である。皮膚のみに症状がある場合には,積極的なステロイド・免疫抑制療法を必要としないケースが多い。このように,皮膚型結節性多発動脈炎(cutaneous polyarteritis nodosa:CPN)との異同が問題となるが,Chapel Hill Consensus Conference 2012(CHCC 2012)の分類では,CPNは皮膚動脈炎(cutaneous arteritis:CA)という名称で単一臓器血管炎のカテゴリーに分類されている。一方,血管炎による内臓病変(重要臓器の梗塞病変,多発性単神経炎など)を有する場合には,大量ステロイド+免疫抑制薬による寛解導入療法および維持療法が必要である。
残り1,532文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する