特発性肺線維症は,特発性間質性肺炎の中で最も頻度の高い疾患であり,肺の慢性・進行性の線維化を特徴とする。病態の進行速度には個人差が認められ,時に急性増悪に陥り,診断確定後の平均生存期間は3~5年と予後不良の疾患である。
自覚症状(乾性咳嗽,労作時呼吸困難),身体所見(両下肺野の捻髪音,ばち状指),血液検査(KL-6,SP-D,SP-Aの上昇),呼吸機能検査(拘束性障害,拡散障害)が診断の参考になる。早期には症状や異常所見に乏しく,健診での胸部異常陰影で発見されることもある。
過敏性肺炎,膠原病,薬剤性肺障害などの原因の除外が重要である。
高分解能CTで両側肺底部・胸膜直下優位に蜂巣肺所見を伴う網状影といった特徴的所見を認めれば診断可能である(最近では,蜂巣肺がなくとも牽引性気管支拡張を認めた場合も,臨床的に特発性肺線維症と矛盾しなければ診断可能とされる)。
外科的肺生検は診断に有用であるが,行えない場合は,経過も含め専門医による暫定的な判断をつけることが有用である。
間質性肺疾患診療の経験を積んだ専門医により高まるため,診断に疑問のある場合や治療方針に迷う場合は,専門医へ紹介することが望ましい。
特発性肺線維症は難病に指定されており,医療費控除等の観点から,申請基準を満たせば速やかに難病申請を行う。なお,軽症の場合も一定額の医療費を要した場合は申請可能である。
慢性安定期の薬物療法:ピレスパ®(ピルフェニドン)やオフェブ®(ニンテダニブ)が推奨され,ステロイドや免疫抑制薬は推奨されない。
治療適応:特発性肺線維症と診断がつく,あるいは専門家が矛盾しないと判断し,症状や機能障害を認めた場合は早めに治療を行う。進行性の努力性肺活量(FVC)低下(3~6カ月で5%以上低下),6分間歩行試験でSpO2<90%は治療適応を検討する。線維化の進行が進みすぎる前の治療開始が望ましい。
治療目標:病状進行の抑制が目標であり,改善や治癒は期待できない。一般的に,年間FVCの低下約200mLが約100mLに抑制される。治療後に疾患進行があっても,忍容性がよければ治療継続がよいとされる。
在宅酸素療法,呼吸リハビリテーション,生活管理,対症療法・緩和医療等も重要である。
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