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脳蘇生/脳保護に関する神経集中治療の現在と今後の戦略について

No.5022 (2020年07月25日発行) P.50

須崎紳一郎  (武蔵野赤十字病院救命救急センター部長)

黒田泰弘  (香川大学医学部救急災害医学教授)

登録日: 2020-07-28

最終更新日: 2020-07-17

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  • いかに医療資源と持てる力と時間を費やして重症例を救命したとしても,患者が「その人であること」すなわち脳機能が戻らなければ,その努力は半ば灰燼に帰す思いです。
    救急集中治療において最難かつ最重要な「脳蘇生/脳保護」に関する神経集中治療の現在の到達点と今後の戦略について,香川大学・黒田泰弘先生にご解説をいただきたく思います。

    【質問者】

    須崎紳一郎 武蔵野赤十字病院救命救急センター部長


    【回答】

     【神経が得意な集中治療専門医を養成し,脳神経系専門医と連携して患者の社会復帰を目指す】

    (1)今までの経過と課題

    神経集中治療のコンセプトは「二次性脳障害の防止」です。頭部外傷,脳卒中,てんかん重積,脳炎/髄膜炎,などに対して,最初のアタックによる障害(一次性脳障害)を軽減することは難しいですが,その後の二次性脳障害を防止して社会復帰率を増加させるのが神経集中治療です。

    問題は,それぞれが脳神経外科,脳神経内科,脳卒中科などで対応され,集中治療医にとってハードルが高いことでした。心停止も救急科,循環器科などで診療されていますが,社会復帰を左右する心拍再開後脳障害に対しては神経集中治療の概念が必要でした。

    疾患は異なっても,二次性脳障害防止のコンセプトは共通です。疾患横断的に神経集中治療の考えを普及させ,脳神経系専門医および集中治療医の苦手意識をなくす必要性を痛感したことが,次に紹介する神経集中治療ハンズオンセミナー創設のきっかけになりました。

    (2)神経集中治療ハンズオンセミナーについて

    神経集中治療ハンズオンセミナーは若手救急医・集中治療医を主な受講生として日本集中治療医学会の公認セミナーとして2017年2月に開始しました。現在はversion 3.0で,午前中のスキルステーションブース(体温管理療法,神経診察,頭蓋内圧モニタリング,経頭蓋超音波による脳血流モニタリング,持続脳波モニタリングとてんかん重積への対応)に加え,午後から心停止後症候群,重症頭部外傷,重症くも膜下出血,神経筋疾患,の4つのシナリオステーションブースから構成され,年4回開催されています。受講生は座学ではなく実践を伴ったスキルとシナリオを学習できます。

    神経集中治療ハンズオンセミナーは受講生の関心およびセミナー終了後の満足度も非常に高く,現在,脳神経外科医,脳神経内科医へのセミナー紹介を進めているところです。

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